WEB活用

Vol.17 顧客戦略、対ネット専業通販

顧客戦略が増える企業は「ネット専業通販の得意な所、苦手な所を冷静に見つめる」、たどり着けない企業は「ネット専業通販を過剰に意識する」

前号(vol.16)では、「専門店」についてその考え方・届ける付加価値について、お話しましたが、vol.17ではネット専業通販※に対して、顧客を育てる専門店として、どのように考えればいいのか、対抗すればいいのか、考えていきたいと思います。

※ネット専業通販とはアマゾン等の店舗を持たずに(パイロットショップを除く)ネットを中心に商品販売をしている会社とします。

ネット販売の市場動向(日本・米国・英国)

平成26年、日本の小売・サービス業のネット販売は12兆7970億円(出典:我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備:経済産業省)で、店舗販売も含めた総額から考えるとネット販売比率は約4%です。ちなみに、ネット販売が進んでいる書籍販売は10.1%(出典:日販『出版物販売額の実態』2015年版)です。

米国では、2013年小売のネット販売の市場規模は2,633億USドル (約32兆円) で、店舗販売も含めた総額から考えるとネット販売比率は約6%です。2018年には約9%に増加すると予想されています(出典:米国 小売りモバイルコマース市場規模・伸び率 他 2012-2018  Billion USD)。

世界で最もネット販売が進んでいる英国では、2014年で人口の73%以上がネットで商品を購入しており、ネット販売比率は約13%になっています。(出典 : Retail Sales Worldwide Will Top $22 Trillion This Year – eMarketer | December 23, 2014)

日本のネット販売は、「店舗販売をしている企業のネット販売」「ネット専業通販」共に伸びるでしょう。最終的にネット販売比率は20%まで伸びるのではという意見もあります(逆に言うと、そこまで行っても80%は店舗販売なのでネット販売はメインではない現実もわかります)。

専門店自身のネット販売

「リアルな専門店も、ネット販売を毛嫌いするのではなく、自らがネット販売に取り組むことが大事になる」のは、多くの専門家が指摘している通りです。顧客を育てる専門店も同じです。

では、店舗販売とネット販売に両方取り組むとして、アマゾン等のネット専業通販にどのように対抗すればいいのでしょうか。まず考えられるのは、オリジナル商品の販売なのですが、それ以外のマーケティング的な対策を考えてみました。

お客様から見た店舗とネット、それぞれの得意な所、苦手な所

まず確かめておきたいのは、お客様から見た店舗とネットそれぞれの得意な所、苦手な所です。「ネット販売の得意な所」、「店舗販売の苦手な所」はどこでしょうか?

  1. 幅広い品揃え
  2. 低価格
  3. 一般情報(誰にでも当てはまる情報)の量の提供
  4. 時間の節約(お店に行かなくてもOK) 等々

「店舗販売の得意な所」、「ネット販売の苦手な所」はどこでしょうか?

  1. (自分がまだ認識していない)新しい提案
  2. ・6.ヒューマンな気遣い
  3. ・7.個別情報(お客様一人ひとりにあった情報、あなただけの情報)の提供
  4. ・8.日常とは違う居心地のいい空間 等々

顧客を育てる専門店は…

顧客を育てる専門店としてまず意識するべきことは、「店舗販売の得意な所」「ネット販売の苦手な所」である「5.新しい生活提案、6. ヒューマンな気遣い、7.個別情報の提供、8.日常とは違う居心地のいい空間」の完成度を上げていくことです。ここは、ネット専業通販(アマゾン等)が強化することが難しい所だからです。

一方で、自店のネット販売にも取り組むことで、「ネット販売の得意な所」「店舗販売の苦手な所」の「3.一般情報の量の提供、4.時間の節約」もお届けします。店舗に来ている既存客がネットでも買えるようになります(丸井さん、東急ハンズさんのネット販売は、店舗に来ているお客様が多いとのことです)。

3〜8の強化を通じて、ネット専業通販(アマゾン等)が得意な「1.幅広い品揃え、2.低価格」に対抗していくことができるのではないでしょうか。

カメラのキタムラさん

専門店でネット販売に積極的に取り組む代表的な企業に、カメラのキタムラさんがあります。

カメラのキタムラさんの全体売上は約1,400億で、その内、ネット売上が約435億(ネット購入率30%以上、業界平均はわずか4%)になっています。特徴的なのは、ネット売上435億の内、お店受取290億・宅配145億で、お店受取の290億の内、注文場所が店舗からが145億、ホームページからが145億になっています。

「ネットで購入してお店で商品を受け取るお客様の姿」、「お店に来て在庫がない商品の紹介を接客等で受けて、購入決断に繋がり、店舗からタブレット等を利用して、ネット購入しているお客様の姿」が浮かびます。専門店のネット販売ならではの取り組み方が見えてきます。

まとめ

「ネット販売」について、どんなイメージを持っていますか?

「ネット専業通販(アマゾン等)」への対抗策、どのように考えていますか?

これからの時代に顧客の育成を目指す専門店は、

・ネット専業通販が中々強化できない「店舗販売の得意な所」「ネット販売の苦手な所」である「5.新しい生活提案、6.ヒューマンな気遣い、7.個別情報の提供、8.日常とは違う居心地のいい空間」を中心に具体的な活動を進めていきつつ、

・自らのネット販売を進めて、「3.一般情報の量の提供、4.時間の節約」を進めて

「ネット専業通販」が得意な「1.幅広い品揃え、2.低価格」に対抗していくことが大事でしょう。これから約3倍〜5倍市場規模が拡大するネット販売市場も視野に入れて、顧客戦略を進めていきましょう。

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