顧客戦略の基本

Vol.8 20:80の法則と顧客戦略

20:80の法則と顧客戦略

顧客戦略が進める企業は「顧客全体をバランスよく捉えた顧客戦略をとる」
たどり着けない企業は「顧客を20:80(ニッパチ)の法則で捉えて、
上位2割に注力する顧客戦略をとる」

企業の中には、「20:80の法則」(8割の利益は2割の上位顧客から得られる)を論拠に、2割の上位顧客を「企業に貢献してくれている顧客」と捉えて、アプローチを集中させようと考える企業があります。
※小売業の場合は実際に計算すると、「30:70の法則」(7割の利益は3割の上位顧客から得られる)ぐらいが多いです。

お客様の状況変化による離脱要因

これは高度経済成長時代の新規獲得を中心に考える顧客戦略にはなかった視点で説得力のあるものでした。実際にDM・レターを2割の上位顧客に絞って出すと反応率が高く、成果があがります。

しかし、長期的視点から見ると2割の上位顧客に注力した顧客戦略は、顧客数を減らします。いくら上位顧客でも、お客様側の状況変化で(企業側が最大限努力しても)離脱が起こるからです。

①引越し・転勤
お店ビジネスのお客様は、店舗から一定距離内に住んでいる、勤めていることで来店しています。お客様の引越し・転勤は顧客離脱に直結します。

②ライフステージの変化
あるお客様が高校生から大学生へ、学生から社会人へ、OLから主婦に、一般社員から管理職へとライフステージが変わ ることで、購入する商品の種類・グレードが変わります。OLの時にはブランド品を多数買っていた人が、結婚・育児とライフステージが変わると、ブランド品 を以前より買わなくなることがあります。

③商品・ブランドへの飽き
お客様の好みが変わってしまうこともあります。以前はファッショナブルな流行の最先端を行くデザインが好きだった人が、定番のデザインを好むように変わることがあります。

そんな理由から、2割の上位顧客に注力した顧客戦略は、2割の上位顧客でさえ、減らしてしまいます。あまり気に止めていない残り8割の顧客数も減っ ていくために、よっぽど新規顧客がうまくいった場合を除いて、全体の顧客数が減ります。顧客を安定して増やすことができません。

全国展開している専門店チェーンが陥る罠

2割の上位顧客に注力した顧客戦略を取る企業では、上位顧客だけにDMを送付することがあります が、2割の上位顧客といえどもDM送付を重ねる毎に段々と反響率は下がります。内容が顧客育成に根ざしている訳ではなく、ディスカウント訴求が中心になっ ていることが多いので、なおさらです。

回数を重ね反響率が下がると、ディスカウント率を上げる。それもやがて効かなくなり、再びディスカウント率を上げるサイクルに陥っている企業が多いのが実態です。全国展開している専門店チェーンではこの形に陥っていることが多いです。

上位2割のお客様も入れ替わる

さらに、上位2割のお客様に注力する顧客戦略には弱点があります。
それは、上位2割のお客様もその選定方法(前年の購入金額等)によって、年々、その中身のお客様は入れ替わってしまうのです。

上位2割のお客様を大切にアプローチしても、その中身のお客様が入れ替わっているのであれば、ある特定のお客様をずっとフォローしている訳ではあり ません。結果として最近売上をくれたお客様を大切にすることになります。それは間違っている訳ではありませんが、お客様との関係を徐々に深めていく形には なっていません。百貨店等で行われているカード施策で、前年の購入金額で来年のポイント換算率が違うのは、この発想から出ています。

上位2割のお客様に注力する顧客戦略はいろいろな面で限界があるのです。

顧客全体をバランスよく捉えた顧客戦略が重要

では、顧客を安定的に増えていくために、どんな考え方で、顧客を捉えて、顧客戦略を進めることが大事なのでしょうか?
シンプルですが、2割の上位顧客だけではなく、それ以外の顧客も含めて顧客全体をバランスよく捉えて、顧客戦略を進めていくことが大事になります。

例えば、顧客全体を見込客・来店客・新規購入客・再購入客・固定客・10年顧客に分類します。その「細分化した各顧客層のそれぞれがどんな状態なのか想いを馳せて」顧客戦略を進めていくのです。

それがお客様を階段を上るように段階的に育成し、継続的な顧客数全体のアップが実現するベースになります。

各顧客層のお客様の状態に丁寧に想いを馳せる

「細分化した各顧客層のそれぞれがどんな状態なのか想いを馳せて」と書きましたが、具体的にどんな形で考えていくかというと、以下のように考えます。

・見込客は
→まだ来店したことがない、お店のことを知らない状態。知っていても何を売っているか、お店が存在することを知っているくらい。

・来店客は
→来店しただけで商品を購入したことがない状態。どんな商品を扱っているか、どんなお店の雰囲気か、どんな人が働いているのか、見た目で判断しているくらい。

・新規購入客は
→お店のことを理解し、商品を購入した段階で、一定の満足はしている状態。残念ながら多くのお客様は次も必ず来店したいとは思っていない。

・再購入客は
→お店のことをよく理解し、商品を何回も購入した状態で、お店に満足している状態。この先ずっと来店し続けたいとは思っていない。

・固定客は
→継続的にお店通っていて、十分に満足している状態。友人等の紹介もしてくれている。

・10年顧客は
→10年間ずっとお店通っていて、お店を愛してくれている状態。生活になくてはならない状態。

 

例えば、ダイエットショップでは、

・見込客は
→カラダへの関心が低いお客様。

・来店客は
→カラダへの関心は高まってきたお客様。

・新規顧客は
→ダイエットをしてみようと決意したお客様。

・中くらいのお客様は
→ダイエットの成果が一定レベルで出たお客様。

・固定客は
→自分の目標体重までダイエットで成功したお客様。

・10年顧客は
→カラダのメンテナンスにお店がなくてはならない状況のお客様。

と考えます。

まとめ

このようにお客様全体を見て、各顧客層の状態に丁寧に想いを馳せれば、自然とそのお客様をどのようにしていきたいのか思い浮かんできて、活動方針、活動基本方向という顧客戦略が見えてきます。

経営者・事業責任者の皆さん、顧客戦略を考える上で、顧客全体をどのように捉えていますか?

顧客が安定的に増える企業は、上位2割のお客様に注力することなく、偏りなく、顧客全体をバランスよく捉えた顧客戦略が重要です。

 

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