顧客戦略が進む企業は「今よりもお客様との共感・共有を増やすことを中心に現場PDCAを廻す」、たどり着けない企業は「今よりも商品を売ることを中心に現場PDCAを廻す」
前回(Vol.18)「人材育成と顧客戦略」の中、「現場P計画–現場D実践–現場C振り返り–現場A改善」について触れましたが、今号ではこの現場PDCAについて、掘り下げていきたいと思います。
顧客を安定的に増やす、現場PDCAの「基本方向」
顧客戦略が進む現場PDCAは、どんな方向を向いて進めるべきなのでしょうか?それを考えるにあたって、今まで辿ってきた時代(1.成長時代、2.低成長時代、3.市場縮小時代)を切り口に振り返ってみましょう。
1.成長時代(高度経済成長からバブルまで)
市場が成長している時代は、お客様の意識はモノ・サービスに向いています。モノ・サービスを提供しているのは、企業なので「売り手が主役の時代」でした。この時代では「お客様に商品を売る現場PDCA」が大事でした。
お店で商品を売ることを一番大事にすることで、企業の売上が上がり、従業員の給料が上がり、それに伴って消費が上がる、再び企業の売上が上がる、従業員の給料が上がる、消費が上がる時代でした。
2.低成長時代(バブル崩壊からリーマンショックまで)
市場が低成長に入ると、モノ・サービスが溢れて、お客様の意識がコストパフォーマンスに向かいます。コストパフォーマンスはお客様の判断の中にあるので「買い手(=お客様)が主役の時代」になります。この時代では「お客様視点の活動を実践する現場PDCA」が大事です。
3.市場縮小時代(東日本大震災以降のこれからの時代)
市場縮小時代を向かえ、東日本大震災を経験した日本では、お客様・働く側の意識が変わっています。これからの時代は、お客様・働く側の意識が地域・社会に向いていきます。売り手と買い手が立場を入れ替わりながら、一緒に地域・社会を創る、地域・社会の時代です。「売り手と買い手の垣根が低くなり、重なり合っていく、売り手と買い手が共感・共有していくことが大事な時代」が今訪れています。これから広がっていくでしょう。
この時代では「お客様との共感・共有を増やす現場PDCA」が大事になっていきます。それが結果として顧客数アップ、売上の安定に繋がっていきます。
特に人を通じて付加価値を届ける接客業態ではより大事になるでしょう。
今のお客様は(接客業態において)、「商品を売ることを中心にPDCAを廻しているお店」よりも「お客様との共感・共有を増やすことを中心にPDCAを廻しているお店」で商品・サービスを買いたいと思っている人が多いからです。
皆さんも1ユーザーとして、1消費者として、お店を選ぶ場合、そのように考えるのではないでしょうか。
売上か顧客満足か、企業か顧客か、あるべき論を超えて、現場PDCAにおいてはお客様中心、お客様との共感・共有中心であることが大事でしょう。
企業全体、経営レベルのPDCAでは、財務・株主・金融機関の要望等の影響で、そう言い切れないこともありますが、お客様とダイレクトに接する現場には、お客様中心、お客様との共感・共有中心と経営層・本部が言い切ることで、現場のノリが良くなります。業績に好影響が出ます。
「商品を売ることを中心にしたPDCA」は、今、これからの時代のテイスト・トーンと相性があまり良くない(決して間違っているのではありません)ので、現場のノリが悪くなり、結果として半期で締めると業績アップに繋がっていない現実を数多く見てきました。現場を動かす経営層・本部は、時代のテイスト・トーンを意識して、現場PDCAの基本方向を考えるべきでしょう。その答えが「お客様との共感・共有を増やす現場PDCA」です。
顧客を安定的に増やす、現場PDCAの「実務」
では、具体的に「お客様との共感・共有を増やす現場PDCA」について、「商品を売ることを中心としたPDCA」と比べながらお伝えしていきます。
現場P計画
・商品を売るPDCAの現場P計画
新商品・季節・施策・キャンペーンをベースに、お客様育成を頭の隅に置いて現場活動の計画を立てる。
・共感・共有を増やすPDCAの現場P計画
お客様育成をベースに、新商品・季節・施策・キャンペーンを有効活用して、お客様との共感・共有が増える現場活動の計画を立てる。
現場D実践
・商品を売るPDCAの現場D実践
お客様に商品を売ることを一番意識して、活動計画を実践していく。
・共感・共有を増やすPDCAの現場D実践
お客様との共感・共有を増やすことを一番意識して、チームで活動を実践していく。結果として売上を獲得していく
現場C振り返り
・商品を売るPDCAの現場C振り返り
売上が達成できたかどうかを中心に振り返りを行う。
・共感・共有を増やす現場C振り返り
お客様との共感・共有が増えた活動場面の共有を中心に振り返りを行う。
現場A改善
・商品を売るPDCAの現場A改善
成功事例を発表会・社内サイト等で伝えて、現場モチベーションアップを通じた現場改善を促す。
・共感・共有を増やすPDCAの現場A改善
お客様との共感・共有が増えた活動事例を収集して、「教育内容の改善」「成功事例のコンテンツ化(成功の本質理解→他スタッフで再現できる内容の抽出→実践ツール用意)」を進めて、現場改善を実務的に丁寧に進める。
まとめ
顧客戦略を進めるには、現場PDCAをどのように進めることが大事なのでしょうか?
「現場はPDCAを廻すことが大事」と言われていますが、ただ廻してもその基本方向、実務が今の時代と合っていなければ、PDCAを廻しても成果になかなか繋がらないでしょう。
経営層・本部が、これからの時代を見据えて、「現場PDCAの基本方向」を「今よりもお客様と共感・共有を増やすこと」に狙いを定めて、「現場P計画–現場D実践–現場C振り返り–現場A改善」の実務を現場に示して、それを現場が丁寧に進めることが、今よりも顧客戦略を進めるために大事です。