顧客戦略が進む企業は「10年後を見据えて、将来の店舗について丁寧に考える」、たどり着けない企業は「将来的に“店舗は絶対になくてもならない”“店舗はいらなくなるんじゃないか”という偏った考えを交差させることが中心になってしまう」
10年後は縮小時代真っ只中
10年後、店舗はどんな場所になるべきなのでしょうか。それを考えるにあたって、時代とともに、店舗はどんな存在だったのか。これまでの時代を振り返ってみましょう。時代を考えるにあたって人口統計から考えていきます。人口と経済成長とは密接に係わってるからです。
まず1970年から2000年までの30年間は「安定成長時代」と考えました。1970年は1億467万人、2000年は1億2,693万人で、30年間で21.2%人口が増えていました。
つづいて2000年から2020年までの20年間を「ゼロ成長時代」と考えました。2000年は1億2,693万人、2020年は1億2,410万人なので、20年間で人口が2.3%ダウンします。微減微増の範囲内でしょう。
2040年(平成42年)は1億728万人になります。2020年が1億2,410人なので、20年間で14.6%ダウンします。2020年から2040年を「縮小時代」と考えました。今後出生率の大幅な上昇や移民政策が実現されなければ、この傾向は続くでしょう。
(出典)総務省「国勢調査」及び「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)
時代によって移り変わる店舗の現場で大事なこと
安定成長時代
「安定成長時代」は、消費者の中心意識として、良い商品・サービスへの強い欲求がありました。売り手が主役の時代でした。店舗は「お客様に良い商品を届けること。お客様の必要性(ニーズ)に応える場所」した。
ゼロ成長時代
「ゼロ成長時代」は、消費者の中心意識として、コストパフォーマンスの意識が高まった時代でした。買い手が主役の時代になっています。店舗は「お客様に支持してもらうこと。お客様の希望(ウォンツ)に応える場所」です。
これからの時代(縮小時代)
これからの「縮小時代(10年後)」は、店舗はどんな場所であることが望まれているのでしょうか。
10年後は、今よりも顧客・働く人の意識が「地域・社会」に向かっていくでしょう。「地域・社会を今よりも良くしていくためにどうするか」そんな考え方が一般的になる時代です。実際にある調査では自分の仕事が社会に役立っていることが仕事のやりがいに深く影響を与えることが分かっています。自分の仕事が社会の役立っていると思っている人(57.8%)の内、仕事にやりがいを感じている人は74.6%いますが、一方で自分の仕事が社会の役立っていると感じない人(42.2%)は仕事にやりがいを感じている人が17.3%しかいませんでした。4倍以上の開きがあります(調査①)。
調査① 最近(2015年)の働く側の意識
出典:メディケア生命保険株式会社(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)
「ソーシャルビジネス・社会貢献活動に関する意識調査」(インターネットリサーチ:2015年3月30日~3月31日の2日間:20~59歳のビジネスパーソン1,000名の有効サンプル)
時代の主役は、「売り手である企業」でも「買い手である顧客」でもなく、「地域・社会」になります。それが成熟社会が深まっていくということなのでしょう。
縮小時代真っ只中の10年後における店舗は、「地域・社会と共存する。成熟社会を生きるお客様を新しい場面に誘う場所」になっていくでしょう。最近の調査でもリアル店舗の情報発信の場所としての重要性が増しています(調査②)。
調査② 商品・サービスを購入する際の情報収集源の変化
商品・サービスを購入する際の情報収集の手段は、マスメディアから、店舗・販売員・ネットに比重が移っています。
出典:NRI「生活者1万人アンケート調査」(2012年、2015年)
お客様を新しい場面に誘うとは?
地域・社会との共存が求められる時代に、お客様を新しい場面に誘うとは、どういう事なのでしょうか。まず自分の業界で、「今までよりもピュアな世界観(考え方・捉え方・判断基準)」を地域・社会に向かって丁寧に明らかにします。そしてお客様の考え方が“真”理に近づく、お客様の日々の生活・暮らしが“善”くなる、お客様のココロが“美”しくなる、「真・善・美」の世界を顧客の接点で実現できるように本気で取り組むことです。
想いの深い消費
「真・善・美」そんな企業・店舗の考え方を受け入れてくれたお客様によって、想いが深い消費が促されます。想いが深い消費とは、お客様の承認欲求・自己実現欲求・コミュニティ発展欲求を満たす消費です。
想いが深い消費により、地域・社会にいる人達の生活・日常がより豊かになります。店舗で働く人の充実感も増していきます。それが「地域・社会と共存する。お客様を新しい場面に誘うこと」です。そんな店舗が10年後の未来に求められる、そんな確信を持っています。