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店舗ビジネスの顧客育成活動(CRM活動)

店舗ビジネスの顧客育成活動

顧客戦略を進める上で、顧客接点の活動は重要です。

活動にはいろいろな考え方がありますが、ここでは顧客育成を中心に据えて、ご紹介します。

まず顧客を見込客・来店客・新規顧客・再購入客・固定客・ファン顧客に分類します。その細分化した顧客層をベースに、階段を上るように段階的に育成するために、5つの活動が大切になります。

 ①見込客を来店客に育成する「新規来店客育成アクション」、②来店客を新規顧客に育成する「新規購入客育成アクション」、③新規顧客を再購入客に育成する「再購入客育成アクション」、④再購入客を固定客に育成する「固定客育成アクション」、⑤固定客を維持する(ファン顧客に育成する)「固定客維持/ファン育成アクション」の5つです。

Step1.新規来店客育成アクション

1-0.基本的な考え方

顧客戦略/CRMの目的である「新しいお客様との出会いを創り、徐々に関係を深めて固定客に育成し、固定客で居続けてもらう」最初のステップが新規来店客育成アクションです。

今まで来店したことがない見込客の皆さんに、はじめての来店を促すアクション(=新規来店客育成アクション)です。

多くの見込客の心理→お店のことを十分に知らない

まだ来店ことがない見込客は、お店のことを知らない状態です。知っていたとしても、何を売っているか知っている、お店があることを知っている程度でしょう。お店のことを十分知っていて来店しないのであれば、あきらめもつきますが、単に知らないのであれば、もったいないです。もっとお店のことを周辺に住んでいる皆さん、働いている皆さんに知ってもらうことが大切です。

その時に、詳しい商品情報のみをお伝えしても、興味を持ってもらうことは難しく、はじめての来店には繋がらないでしょう。

例えば、新しいパン屋さんのチラシを見て、商品と価格のみが掲載されていたら、パン好きの方以外、興味が沸くことはあまりないでしょう。

皆さんが実施している新規来店客育成アクションは、お店にあまり興味のないお客様を前提に実施されていますか?

多くのお店の新規来店客育成アクションの課題

 →お店に興味を持ってもらえない

見込客を新規来店客に育成するには、お店に興味を持ってもらうことが大切になります。その時に重要になるのが、商品の内容以外のお店の「基本情報」を伝えることです。「基本情報」とは、そもそもこの商品を提供しているお店は、どんなお店なのか、その経営者/店長はどんな考え方を持っているのか、現在どんなお客様から支持されているのかといった情報です。商品の内容ももちろん大切なのですが、それだけでは情報の偏りがあるのです。

健康食品を通信販売している「やずや」のチラシには、商品と価格だけではなく、お客様の声、大学教授の声等の周辺情報を載せることで、見込客のサンプル請求を促しています。

1-1.チラシのポスティング・街頭配布

 日常的な商品・サービスを提供しているお店は、お客様の大部分がお店の周辺に住んでいる人や勤めている人です。お店周辺でいかにアピールできるかが、一度も来店したことがない見込客を来店させるポイントです。

 アピールする手段として最も有効なのが、チラシのポスティング・街頭配布です。

商圏把握、そしてエリア選定

 まず重要なことは自店の商圏を把握することです。皆さんのお店ではどのように商圏を把握していますか? 

 既存お客様の住所データをMAP上に落とし込み、商圏を把握します。実際のデータを積み上げるので、正確に商圏が把握できます。その結果に基づいて、ポスティング・街頭配布のエリアを選定します。

 ある大手百貨店では商圏を正確に把握するために、お客様の住所データをマップに落とし込んだ所、当初は自社の沿線がほとんどだと思っていたのが、実はその他の沿線からの来店も多く、チラシの配布エリアを再検討しているそうです。

意外と狭い商圏範囲

 商圏は思ったより小さいことが多いです。例えば、都市部のマクドナルドは、歩いて5分・自動車で3分のエリアお客様で売上高の75%を占めます。ある総合スーパーは、食品1km、衣料品3kmを基本商圏にしています。家電チェーンの小規模(街の電気店モデル)FC展開の基本商圏は、自転車で10分圏内です。

実施のポイント

①ポスティング

 ポスティングは新聞折込チラシに比べコストが高くなります。しかし、多数の折込チラシの中で埋没することがなく、効果も高い手法です。

  ● 配布形態

 通常はA4サイズのチラシを3つ折にします。3つ折にした表面に大きな文字でキャッチコピーが見えるようにレイアウトします。

  ● 枚数と時間

 1時間あたりの配布枚数は100枚~600枚とエリアによって大きな違いがあります。お店スタッフが行う場合は、その他の仕事に支障が出ないように1回あたり2時間程度に抑えます。

②街頭配布

 街頭配布は、主に多くの人が歩いている、都市部の住宅街・オフィス街で効果がある手法です。

  ● 実施場所

 お店の前や通行量が多い場所で実施します。

  ● 時間(タイミング)

 住宅街では、通勤時、帰宅時のタイミング。オフィス街は、朝は急いでいる人が多いので、ランチ時間・帰宅時がお勧めです。

  ● 配布時の注意点

 数メートル先から目線を合わせ、目で微笑みかけ、ご挨拶をすることで配布率(配布枚数/通行客数)が高まります。

ツール作成のポイント

①お客様視点/共感のキャッチコピー

 高い確率で見込客にチラシを見てもらうためには、どんなお店なのかダイレクトに伝えたキャッチコピー、お客様の悩み・心配事・潜在意識にダイレクト訴求したキャッチコピーが有効です。反響の悪いチラシは、企業側のメッセージがメインになり、関心が高い人を除いて目に留まりません。

②キャッチコピーの詳細説明

 キャッチコピーで訴求した内容を受けて、お客様が納得する理由を明確に説明します。キャッチコピーのメッセージが強くても、その理由が曖昧だと、疑問が湧いたままで終わります。

③地図のわかりやすさ

 見込客はまだ来店したことがないので、お店がどこにあるのか正確に把握していません。地図をわかりやすくすることが重要です。

④レスポンス機能

 チラシを見て関心のあった方の中から、実際に来店する人は僅かです。関心はあるけど、来店までには至らない方々を見込客リストとしてプールするために、チラシには、パンフレット・サンプル請求欄(返信ハガキ・FAX)を設けます。

チラシ反響テスト

 チラシの反響は、商品が同じでも内容によって1桁違う場合もあるほど、実施してみないとわかりません。そこでテストが必要になります。

 クリエイティブ軸・ターゲット軸・オファー軸等から複数のチラシを制作します。異なるチラシで同じエリア・配布枚数で行い、比べることで、反響の高いチラシがわかります。反響は、「1人の来店に費やしたコスト」「1人の購入に費やしたコスト」「来店から購入まで転じた割合」で比較します。

1-2.メッセージスタンド

 お店の前をいつも通る見込客は、当然お店のことを知っています。「中に入るとどんな商品が置いてあるんだろう」と気になっています。店構えもきちんとできています。それでも、来店に至らないケースがあります。特に専門店・高級店のように比較的来店客数が少ない業態では、なおさら初回来店のハードルが高くなります。

 そこで提案したいのが、店内の様子を見込客に積極的に公開することです。その役割にピッタリなのが、店前の路上に置く、移動できる小型の看板「メッセージスタンド」です。ビジネス街のランチ時間に、飲食店がメニューを告知する時によく使っています。費用もそれほどではなく、気軽に実施できる看板です。

 メッセージスタンドは様々なタイプがありますが、よく見るのは黒板タイプのものです。スタッフが手書きで自らの言葉を綴っています。

 お店で実施する際のメインメッセージは、3つの方向があります。①お店のショップコンセプト型、②お客様の関係性型、③旬の情報発信型です。

①お店のショップコンセプト型は、お店で一番大切にしている活動、目指している未来像をダイレクトに伝えます。

②お客様の関係性型は、「昨日来たお客様が…」「お客様のご希望にお答えして…」「昨日お客様からご意見をいただきました」「今、この商品が、お客様から支持されています」等、お店とお客様の関わりを想像できる内容にすることです。

③旬の情報発信型は、キャンペーン情報、新商品情報等です。

内容のポイントは、さらに、サブメッセージとしてお店への誘引メッセージ、販促ツールの設置、看板の設置場所・向きも重要なポイントです。

1-3.来店誘引型ホームページ

来店したことがない見込客を新規来店客に育成するために、ホームページの重要性が高まっています。皆さんがリアルショップである飲食店を、ネットで調べることが多いことからも明らかにでしょう。ホームページでお店の概要を確認してから来店することが、当たり前になっています。これからどんどんこの傾向が進んでいくでしょう。

既存のお客様の来店誘引も目的

 さらに、普段来店している再購入客・固定客・ファン客等の既存お客様に、ホームページを見てもらい、次回来店を促すことも第2の目的になるでしょう。

 ホームページはリアルタイムの更新ができるので、お店の今をお客様にアピールすることができるからです。これに対しニュースレター・DMでは限界があるからです。

 お客様の中には、「せっかく行っても、いい商品がなかったらヤダな」と来店を躊躇する人がいます。ホームページでお店の今を知ってもらい「いい商品ありそうだな」「だいぶ売場が変わっている」と感じてもらうことで、来店を促します。

CRMの視点からのホームページ7つの強化ポイント

 CRMを進める企業のホームページでは、通常よくあるお店概要(地図)・掲示板・スタッフ紹介・FAQ・ご紹介メディア等に加えて、以下の内容を強化します。

①ショップコンセプト/お店の特徴

 お店がお客様に最も伝えたい、大切なことをショップコンセプト/お店の特徴としてまず伝えます。真っ先のお客様に目に飛び込んでくる位置に表示します。

②今のお店状況を伝える「売場・一押し商品の写真紹介」

 重点的に訴求したい売場を数ヶ所設定。ディスプレイコーナーを中心に、各売場の一押し商品を公開します。顧客戦略を進める企業では、既存のお客様の来店頻度アップが重要です。そのために定期的に売場を変化させます。それに合わせて、ホームページも随時更新します。

③今お客様に支持されている「人気商品ランキング」

 週末、今週、今月等、一定期間の人気商品をランキングで紹介します。お客様から今支持されている商品を紹介することで、TV・雑誌等ではなく、お店発の流行情報を発信します。顧客戦略を進める企業では、お店が情報発信の主役です。

④ホームページならではの「商品詳細説明」

  ● スタッフが動画で語る商品特徴

 担当スタッフが自らの言葉で心を込めて、商品を説明する動画を配信。1商品1分以内で説明します。

  ● バイヤーが仕入れた理由/商品開発担当者が語る開発理由

 バイヤーが仕入れた理由、商品開発の秘話・生産工程等のこだわりは、お客様に付加価値を感じてもらうために伝えるべき情報です。しかし、スタッフが伝えるには限界があります。バイヤー・商品開発担当者・生産管理担当者が自分の言葉で分かりやすく説明します。

  ● 在庫状況

 全商品の在庫状況を公開するのは大変なので、人気商品のみ在庫状況を色・サイズ別に公開します。お客様は自分に合う色・サイズが店頭にどのくらいあるか確認後、来店できます。

⑤お客様との関係性を伝える「店長・スタッフブログ」

 日頃の店頭活動の中で生まれた、お客様との関わり合いをブログ(日記風ホームページ)で公開します。お店の人間がどんなことを考えているのか、お客様に知ってもらいます。業務の負担にならないように、1スタッフ、1週間に1回程度が最適でしょう。

⑥ネットならではの詳細な「お客様の声」

 お客様に信頼性が高い「お客様の声」は、顧客戦略を進める企業にとってお客様獲得の原動力になる大切な情報です。通常は、紙媒体(パンフレット・ニュースレター等)で公表されていますが、誌面の制約から文章と顔写真ほどの情報しか提供できません。しかし、ホームページでは誌面の制約がありません。より深く、より詳細に、よりビジュアルで、お客様の声を紹介できます。

 例えば、お客様へのインタビューの動画配信、最近のすべての購入商品の公開、購入商品を活用したライフスタイル(ex.家具店でしたら、購入家具のご自宅での活用写真)を紹介することも可能です。

⑦来店への最後の一押し「来店促進企画」

 ホームページを定期的に訪問する動機づくり、来店への最後の一押しとして、ホームページ上で来店促進企画を実施します。期間限定の購入者プレゼント、小冊子プレゼント等、今来店すると何らかのメリットがある企画です。

CRMを進める企業では、お店毎のホームページ開設が前提

 CRMを進める企業のホームページの中には、本部から消費者への情報発信機能がメインで、各店の情報は地図・住所等の基本情報だけの場合があります。それでは既存お客様がホームページにアクセスしても、いつも来店しているお店の状況がわかりません。まず、お店毎のホームページを作成することが第一歩になります。

Step2.新規購入客育成アクション

2-0.基本的な考え方

顧客戦略/CRMの目的である「新しいお客様との出会いを創り、徐々に関係を深めて固定客に育成し、固定客で居続けてもらう」2つ目のステップが新規購入客育成アクションです。

来店したことがあるお客様に、はじめての購入を促すアクション(=新規購入客育成アクション)です。

多くの新規来店客の心理→お店のことを表面的に知っている  

新規来店客は、数回来店しただけで、商品を購入したことがないので、どんな商品を扱っているか、どんなお店の雰囲気か、どんな人が働いているのか、といった見た目で判断できる情報のみ知っている状態でしょう。お店の想い・姿勢といったことまでは分からないでしょう。

例えば、近隣のショッピングセンターにあるアパレルショップに、1~2回入ったことがあるとします(商品を購入したことがない)。取扱商品のこと、店長の印象以外、殆ど知らないのが正直な所ではないでしょうか。

皆さんが実施している新規購入客育成アクションは、お店の表面的ことしか知らないお客様を前提に実施されていますか?

多くのお店の新規購入客育成アクションの課題

 →お店の基本姿勢を理解してもらえない

新規来店客を新規購入客に育成するには、お店の基本姿勢を感じてもらうことが大切になります。具体的には、商品購入の水先案内人(アドバイザー)であることを感じてもらうことです。

今の時代、商品だけでは差が出ないことが多いでしょう。商品の細かいスペックの説明をしても、お客様の深い理解は期待できないでしょう。まずは、お客様と同じ立場に立って、その商品カテゴリーのプロフェッショナルとして、お客様の商品購入の水先案内人と感じてもらうことが大切です(お客様は、どんなに情報収集しても、素人であることに変わりはありません)。価格で勝負しないお店の場合、特に大切になります。

2-1.初回来店は、長い付き合いのはじまり

 はじめて見るお客様、新規来店客がお店に入ってきました。皆さんは、どんな気持ちになりますか? 

 「新しいお客様が来た。今月の売上達成ちょっと厳しくなってきたし、なんとか買ってくれないかなあ。でも“売り込まれている”とお客様に思われると買ってくれないから、慎重に接客しないと…」そんな気持ちになっていませんか? 一方、お客様はどんな気持ちなのでしょうか。

はじめて来店する時のお客様心理

 はじめて来店するお客様の多くは「このお店、いい商品ありそう。ちょっと入ってみようかな。売り込まれたら困るけど」こんな気持ちでしょう。

 例えば、百貨店にコートを購入しに行ったとします。「強引に試着を薦められたら、イヤだな。断ると悪いし」と思い、ブランドブースの中に入れないこと、ありませんか? また、実際に入店しても周到に商品を勧められると“このお店、無理やり商品を売り込む所があるなぁ”と感じ、そのお店から足が遠のいてしまったり、強引さを感じるクロージングを受け、今日はやめておこうと思ったこと、ありませんか? お客様心理は複雑です。皆さん自身も一人お客様の立場の時を思い出せば、想像できると思います。

対策を講じるが…テクニック論に終わる。

 このようなお客様心理を見越して多くのお店では対策を講じています。例えばお客様をAタイプ・Bタイプ・Cタイプと分け、タイプ毎に声がけからクロージングまでのアクションパターンを頭に描いて接客する等です。

 ここで皆さんに考えていただきたいことがあります。初回来店のお客様をクロージングに持っていくテクニックは、本当に効果があるのかということです。また、それらのテクニックの効果が、最近減っていると感じませんか。

 その原因は、最近のお客様は“企業側のテクニックに乗せられる”ことに抵抗感がある、また嫌悪感を持つからです。皆さんもお客様の立場で他のお店に行くと、同じ気持ちになりませんか? このお店、こんなテクニックで買わせようとしているのか、その手には乗らないよと…。

 女性の社会進出がそれほど進んでいなかった時代、企業側のテクニックにはそれなりの効果がありました。しかし多くの女性が一度は社会に出たことがある今では、企業・お店のテクニックは見透かされています。

 「いやいや、そんなことはない。この前、初めて来たお客様に○○のテクニックを使ったら、○万円買っていったよ」と言う声が聞こえてきそうです。しかし、そのお客様は、雑誌・ネットですでに商品を調べていて、ある程度商品購入を決めて来店した可能性も十分考えられるのです。お客様は賢いものです。では、CRMの視点から初回来店のお客様に対してどんな接客をすればいいのでしょか。

初回来店は今後続く関係のはじまり。

 CRMの目的は「お客様との継続的な関係づくり」です。CRMでは初回来店を「継続的に続く関係の“はじまりの場面”“出会いの場面”」と捉えます。その意識を持って接客すれば、お客様はリラックスして商品を選ぶことができ、継続的な来店に繋がります。

 具体的なアクションは、業種・取扱商品・客層によって異なります。よくある基本パターンは、お客様が商品に関心を示している時、困っている時、説明を求めていると感じた時に、お客様にゆっくり近づきご挨拶します。その後、商品説明をしながら、お客様ニーズを探り、商品選びの水先案内人として接客します。

初回来店で失敗するとその後のマーケティングは難しい

 お客様が初回来店の接客で、お店の接客に抵抗感を持ったらどうなるでしょう。その後、どんな素晴らしい心のこもった御礼状を出そうが、定期的にDMを出そうが、単なる販促テクニックと思われてしまいます。キメ細やかなアクションがしつこいアクションになってしまうのです。そうなると、これらの費用はすべて無駄になります。それだけ初回接客は重要です。

すぐに売り込まない、化粧品店の初回接客

 女性の皆さん、百貨店・スーパーの化粧品販売スタッフから、売ろう、売ろうという気配を感じ、不快感を覚えた経験はありませんか。

 ある化粧品メーカーでは、初回来店時の対応を徹底することで、お客様育成が進み、購入者を対象としたアンケートで3回以上購入したお客様が6割を超えているそうです。どんな対応をしているかというと「カウンセリング→無料サンプル配布」を徹底し、初回カウンセリングで商品を購入しなくても済むようにしているのです。30代後半~40代の女性は、カウンセリングを受けると買わなくてはいけないというプレッシャーを持ちがちですが、そのプレシャーから開放してあげているのです。

2-2.望ましい商品紹介は“軸”が重要

まだ一度も来店したことがない、商品を購入したこともない新規来店客は、購入履歴もなく、そのお客様を知っているスタッフもいません。このような新規来店客にはどんな接客をすればいいのでしょうか。

 CRMだからと言って、変にお客様の懐に入るようなコミュニケーションをする必要はありません。プライベートでもいきなり馴れ馴れしい人は、あんまり良い印象を持たれません。それと同じです。

 新規来店客には商品・サービス紹介を切り口に接客します。ただし、ただ商品を紹介すればよいというわけではありません。「望ましい商品紹介」と「望ましくない…つまり、新規来店客から嫌がられる商品紹介」があります。では、まず新規来店客から嫌がられる商品紹介とは、どんな商品紹介なのでしょうか。

嫌がられる商品紹介は「商品スペックの細かい説明」

 これはお客様が買い物をする時に最も大切にしていることを考えるとおのずと答えは出てきます。それは「後悔する商品選びをしたくない、間違った商品選びをしたくない」ということです。よくお客様の声で「商品について詳しく知りたい」という声を耳にしますが、それは後悔する商品選びをしたくないために言っているだけで、最も大切にしていることではありません。

 「商品について詳しく知りたい」というお客様の声を頼りに「商品知識がないからウチのスタッフはうまく商品紹介ができないんだよ」と認識しているお店の経営者の方々がいます。しかし、やみくもに商品スペックの細かい知識を習得しても、お客様への上手な商品紹介はできません。商品スペックの細かい知識は、説明しても(一部のマニアの方を除いて)お客様にはよくわからないからです。わからない話が続くと、お客様は押し売りされているとさえ感じます。一生懸命に説明すればするほど、お客様から望まれない接客になってしまうのです。 

 もし、このような接客を会社・お店の方針で実施しているのなら、スタッフにとって微妙です…。お客様の不満をダイレクトに感じるのは、顧客接点のスタッフなのです。

私の家電量販店での接客体験

 先日私は、家電店で液晶TVを購入したのですが、いくつかスタッフに質問した所、専門用語をたくさんもらいました。不思議なもので、人は勉強するとそれを披露したくなるようです。折角、商品知識を勉強しているのにもったいないと感じました。

 また、ある量販店では、従来のメーカーに頼っていた接客教育を、自社の現場スタッフ主導に切り替えたそうです。接客に優れた現場社員が講師となり、接客教育を行ったわけです。その理由は、以前のメーカー主催の勉強会では、商品の細かいスペックには詳しくなっても、お客様から見た接客向上には結びつかず、売上にも繋がらなかったからです。

 では、「望ましい商品紹介」とはどんな商品紹介なのでしょうか。

望ましい商品紹介は「軸とレベルの商品紹介」

 望ましい商品紹介とは、紹介商品と他商品の違いを「明確な“軸”を持ち、その“レベル”をお客様に紹介する」ことです。これを「軸とレベルの商品紹介」と言い、以下の3つのポイントを持って商品紹介をします。

①お客様が商品を選ぶ軸は何か。

②軸ごとに紹介商品が他商品と比べてどのレベルにあるか。

③紹介商品の一番のお勧めポイントはどこにあるのか。

 例えば、ある女性がジャケットを選んでいるとします。この場合、ジャケットの選択軸として、素材・色・シルエット・最近の流行・扱いやすさなどが浮かびます。「素材」が綿であったなら他の素材と比べて、高級なのか、中級なのか、低級なのか、どんな特徴があるのか、「色」が茶色であったなら、紺・白と比べてどんな印象になるのか、「最近の流行」からみて最先端なのか、定番なのか、個性的なのかを、お客様の受け答えに応じて説明します。

お客様視点のコミュニケーション

 「軸とレベルの商品紹介」は、お客様の「後悔する商品選びをしたくない、間違った商品選びをしたくない」という気持ちに応えるコミュニケーションです。言い換えれば、お客様視点のコミュニケーションと言えます。一方「商品スペックの細かい説明」は企業視点のコミュニケーションと言えるでしょう。

 あるCVSチェーンのお店では、うなぎ弁当の予約販売で見事に全国第1位になりました。成功のポイントは「うなぎ屋さんに負けない味です」という商品紹介トーク。味という軸を持ち、うなぎ屋さんという専門店とレベルを比較し、そのレベルを伝えることで、商品品質を訴求したのです。

2-3.コミュニケーションPOP

 一度も商品を購入していない新規来店客とお店・スタッフとの間には、まだ関係ができていません。お客様の中には、スタッフから話かけられることに抵抗を覚える人もいます。このようなお客様とスタッフの間に微妙な距離間がある状態から、スムーズに接客に結び付ける、この役割を担うのがPOPです。ここで言うPOPは、メーカー発の機能情報で構成されたPOPではありません。「お客様とコミュニケーションを交わすキッカケを作るPOP」=コミュニケーションPOPです。

 具体的なお店の場面を想像すると、まず来店客はコミュニケーションPOPを見て自分の頭の中にイメージを膨らませます。そのタイミングを見計らってスタッフが話かけるのです。このステップを踏むと、来店客はスムーズに接客を受け入れることができます。コミュニケーションPOPがスタッフとお客様のクッションの役割を果たします。POPでは、詳しい商品の紹介は必要ありません。スタッフが説明すれば良いからです。

 POPのお話をすると「手書きで作らないといけないの?」と誤解する人が多いのですが、手書きである必要はありません。高級品を販売しているお店で手書きPOPを使えば、ショップイメージを傷つけてしまいます。


Step3.再購入客育成アクション

3-0.基本的な考え方

顧客戦略/CRMの目的である「新しいお客様との出会いを創り、徐々に関係を深めて固定客に育成し、固定客で居続けてもらう」3つ目のステップが再購入客育成アクションです。

1回購入したことがあるお客様に、再び購入を促すアクション(=再購入客育成アクション)です。

多くの新規購入客の心理→次も必ず来店しようと思っていない 

新規購入客は、お店のことを理解し、商品を購入した状態で、一定の満足はしているでしょう。ただ、多くのお客様は次も必ず来店したいと思っていないでしょう。

例えば、自分の会社の近くにあるお花屋さんで、はじめてお花を購入し、商品もよく、お店のスタッフの対応も普通によかったとします。何の不満もなかったとしても、それだけで次も必ず来店したいとは思わないでしょう。

多くのお店の再購入客育成アクションの課題

 →お客様の心に触れられていない

新規購入客を再購入客に育成するには、お客様の心に触れることが大切になります。小さな気遣い、新しい気づきを与えることで、ちょっと普通のお店と違うと感じてもらいます。

今の時代、不満を与えない、クレームにならない対応は、当たり前です。チェーン店で実施されている接客7大用語、笑顔での接客ができているからといって、次も必ず来店したいと思わないでしょう。

お店の小さな気遣い、お店から新しい気づきを得られた時にはじめて、次も必ず来店したいと心から思ってくれるのです。

3-1.会計後のフォロー接客

 はじめて商品を購入してくれた新規購入客にもう一度来店してもらうこと、これはCRMではとても重要なことです。しかし、現状はどうでしょうか。CRMに取り組んでいる百貨店でさえ、年間1回の購入しかないカード会員がかなりの数に上り、新規購入客から再購入客への育成はあまり進んでいません。

 市場が拡大している高度経済成長・バブル期では、この事実を十分認識する必要も対策を講じる必要もなかったのでしょう。市場の拡大が他のお店へのお客様流出を補ってくれていたからです。今は状況が違います。新規購入客をいかに再来店させるか、現実の問題として解決しなければならないのです。

なぜ、多くの新規購入客は再来店しないのか

 これには、勧められた商品が自分に合わなかった、接客態度に好感が持てなかった等、様々な原因が考えられますが、まず工夫しなければいけないのは購入直後の接客です。

 通常のお店では、お客様が商品購入を決めると、商品を包み、会計処理をし、丁寧にお礼を言うアクションが行われます。実はこのアクションの精度をいくら高めても再来店には繋がりません。新規購入客が持つ不安への配慮がないからです。

新規購入客が持つ不安とは

 お客様は商品“選択時”「この商品でいいのか」と不安を持ちながら商品を選んでいます。さらに、商品“購入直後”も「このお店に頼んで本当によかったのか」「この商品でよかったのか」不安を覚えているものです。この不安は皆さんも自分で商品を購入した時によく感じると思います。

 通常のお店では、商品選択時の不安について商品紹介・商品選択のヒントを話し、お客様の不安を解消します。しかし、商品購入直後については対策を講じていません。

会計が終わった購入直後のフォロー接客で不安を解消する

 そんな新規購入客が持つ不安を解消するために、会計が終わった購入直後に商品特徴の再伝達・使い方・メンテナンス等について詳しく説明します。時間は商品にもよりますが、1~5分程度、行います。この購入直後のフォロー接客でお客様に「私の購入判断は正しかった」と確信いただくことができ、お客様が持っていた大部分の不安は解消されます。

購入直後のタイミングはお客様が耳を傾けてくれる

 実は、商品“選択時”は、売る側から情報を伝えても、お客様は“売り込まれている”という意識からほとんど話を聞いていないケースが多いのです。煙たがられることもあります。

 しかし、商品“購入直後”は「自分の購入判断の正しさを実感したい」心理が働き、売る側からの情報に耳を傾けてくれます。商品“購入直後”は、情報提供すればするほど喜ばれます。

 お客様から喜ばれることは、スタッフも前向きに取り組みやすく、お店で定着しやすいという一面も見逃せません。スタッフは、この時こそ、お客様と接する喜びを感じるでしょう。購入直後の接客は、売る側と買う側が無条件に想いを共有することができる大切な場面になります。

 購入後にDMを送付して行う方法もありますが、それにはお客様の名前・住所を獲得しなければならず、費用も掛かるので実施ハードルが高くなります。また、面と向かってのダイレクトなコミュニケーションの方が効果も高いのです。

 購入直後のフォロー接客は、ネット通販ではできません。お店ビジネスだからこそできることです。ネット通販との競合が騒がれる今日ですが、お店ビジネスでしかできないことをしっかり行うことが大切です。

様々な業種で取り組める購入直後のフォロー接客

 カメラ販売大手のキタムラでは、デジタルカメラの購入直後15分間で、お客様が購入した機種と同じデジタルカメラで撮影、画像が入った記録メディアをプリント機器に差込み出力、撮影品質を体感してもらっています。購入機種の特徴の再伝達・撮影方法・データの取扱い・メンテナンスについても説明しているのでしょう。

 家電店でもデジタル家電の購入直後に、お客様の希望があれば、接続方法・録画等の基本動作について簡単に説明すると機械に弱い方から喜ばれます。

 紳士服を売っているお店では、スーツの購入直後に生地メーカーの歴史・伝統、素材の特徴、縫製のこだわり等を伝えます。その接客でお客様は愛着を持ってスーツを着ることができ、次回のスーツ購入の際、再びそのお店に来店することになるでしょう。

 飲食店ではメニュー注文後か、料理を出す時に、素材・調理法・食べ方について説明することでより味わって食べていただけます。

3-2.お客様から尊敬される、教室イベント

 新規購入客は1回、商品を購入している程度なので、企業・お店・スタッフに対して特別な想いを持っていないでしょう。そのような新規購入客を育成するには、どうすればいいのでしょうか。有効な手段の一つが、お客様にお店・スタッフが専門知識を持っている事実を知ってもらい、お店・スタッフを尊敬してもらうことです。

 専門知識があることを伝える場面として日頃の接客が考えられますが、時間が限られ、立ち話になってしまうので、お客様が尊敬するほど専門知識があることを伝えるのは難しいでしょう。そこで実施してもらいたいのが「教室イベント」です。

教室イベントとは専門知識を伝えるイベント

 教室イベントとは、お客様を一つの場所に集め、講義形式で専門知識を伝えるイベントです。このような啓蒙イベントは、コンサルティング会社、PCソフト会社等の法人をお客様に持つ企業がよく行っています。しかし、お店ビジネスのようなエンドユーザーをお客様に持つビジネスではあまり行われていません。

店長・スタッフが講師を務める

 講師は外部から呼ばず、店長・スタッフが務めます。店長・スタッフの知識の奥深さをお客様に伝えることで尊敬を獲得します。この尊敬は、来店時のスタッフ指名に繋がります。お客様は専門知識を持つ人から接客を受け、商品を選びたいからです。

 「ウチのスタッフは勉強しないから無理だよ」と言う経営者・店長がいますが、こういう機会があるから勉強します。誰でも大勢の前で恥をかくのは避けたいものです。この勉強は日頃の仕事の質を高めます。

紳士靴店で取り組む教室イベント

 高級紳士靴ブランドショップの「シューケアセミナー」に参加したことがあります。これはまさに「教室イベント」でした。場所は通常お店内で行われ、30代男性がメインで25名ほどの参加者が集まっていました。

 内容は、革靴の手入れについて40分程の講義で、革靴を水にぬらすというTV・雑誌等であまり紹介されていないお手入れ方法を説明してくれました。

 講義終了後、すぐ退店したのは2~3割。その他の人は靴を見たり、履いてみたり、店員の説明を受けたりと、店内は大盛り上がりでした。そして15分ほどの間に2~3人が靴を購入していました。その一週間後には、全文手書きのイベント参加の御礼状が私の手元に届きました。

テーマはお客様の探求心に響く、切り口・シズル感が重要

 教室イベントのテーマ設定は、お客様の探究心に響く、切り口・シズル感が重要です。単に「○○の基礎知識」では集客は見込めません。「知って得する。これで安心。○○○の知恵教えます」「基本5条件!これだけ知っていれば、あなたもセミプロ」等、テーマ設定を工夫することで、数多くのお客様をイベント参加へと導きます。

内容が難しくなりすぎないように

 内容は程々に、あまり難しくならないようにします。私もセミナーの講師を務めさせていただいていますが、内容の7割は参加している皆さんがなんとなく知っている知識を整理する話、3割を知らない話にします。そうすると、終わった後「頭の中でモヤモヤしていたことが整理できた。新しいことも学べた」と満足していただけることが多いようです。新しい知識を数多く伝えようと意気込みすぎないことがポイントです。

業種別:啓蒙イベントテーマ例

 ここでは業種別に具体的なイベントテーマをあげてみます。

①旅行会社

 「ピラミッドの魅力をトコトン語ります。エジプト旅行ご説明会」

②化粧品店

 「2020年春、流行のメーキャップ10パターン大公開」

③ドラッグストア

 「もっと健康、あなたにピッタリの健康食品の選び方、教えます」

④フランス料理店

 「当店ソムリエが伝授します。大人のワイン嗜み術」

⑤園芸店・ホームセンター

 「狭いスペースでもできます。べランダガーデニング5つの工夫」

集客できなくても実施する意味がある

 教室イベントは、それほど集客がなくても実施する意味があります。なぜならイベントの内容は、お客様に知って欲しい専門知識です。イベント後、店内ボードに張ったり、ニュースレターに掲載したりと、様々な場面で活用できるからです。つまり、お店からお客様への情報発信のネタになります。

3-3.Thanksメッセージカード

皆さんは、どんなお店の固定客になっていますか? そのお店で初めて購入した時のこと、覚えていますか? 初めての購入は、お店・スタッフ・商品のことをほとんど知らないので、勇気が必要です。

 お店はお客様の勇気に応えて、しっかり感謝しているでしょうか。通常のお店では感謝の気持ちを言葉(接客トーク)でしか、伝えていません。お客様を1人の生活者と見た場合、第一の関心は、仕事・家族・子供・恋人・趣味のことです。買い物をした後、一歩お店から出たら、感謝の言葉(接客トーク)は簡単に忘れられます。

 そこで提案したいのが、新規購入客への御礼の気持ちを「Thanksメッセージカード」に託し、会計時にお渡しすることです。お客様の手元に残る、これはお客様の記憶に留めてもらう意味で重要です。

実施のハードルが低い

 通常、実施されているハガキの御礼状は、お客様情報(名前・住所等)を獲得する必要があります。個人情報保護の問題等から情報入手が難しくなった今、どうしても実施が限定的になります。しかし「Thanksメッセージカード」は会計時にレシートと一緒にお渡しするので、簡単に幅広く実施できます。

 単価が低い業種では、コストの問題からハガキの御礼状送付は、元々行われていません。「Thanksメッセージカード」であれば、送料がかからないので実施できます。

ツール作成のポイント

①形状→名刺大

 大げさではなく、さりげない実施がお客様の琴線に触れます。大きさは名刺大ほどにします。形にオリジナリティを出し、インパクトを与えることも検討しましょう。

②素材→特殊な紙

 少し厚めの素材を使い、ショップイメージに合った特殊な紙質(アート紙・マット紙・レザック・和紙等)を使うと、お客様を大切にしているイメージが伝わります。

③内容→御礼+祈願

 御礼(ex.有り難う御座いました)と祈願(ex.今後とも宜しくお願いします)を中心とします。割引・お得な情報は入れても最後に触れる程にします。それが中心になると御礼カードが、販促ツールになるからです。

④書体→手書きか手書き風フォント

 手書きのものに接することが少なくなっている今、手書きのメッセージは心に響きます。できるだけ手書きで「Thanksメッセージカード」を作りましょう。

 手間・時間的制約の関係から手書きが難しい場合は、手書きフォントの活用や、一度手書きしたものをコピー、又はスキャナーで取り込みプリンターで出力する方法もあります。

 但し、貴金属・時計・ブランド品等、イメージが重要な商品を販売しているお店では、手書き文字はチープなイメージを与えかねないので、通常の書体で作成します。

新規購入客だけではなく、すべての購入客への実施も可能

 「Thanksメッセージカード」は、新規購入客だけではなく、再購入客・固定客・ファンのお客様にも配布しましょう。

 実施にあたっては、新規購入客用カードに加えて、再購入客用カード、固定客・ファンお客様用カードの3つの「Thanksメッセージカード」が必要です。どのお客様層かわからないお客様への対応も想定し、誰にでも配布できるカードも用意しましょう。

アシックス直営店で取り組む、Thanksメッセージカード

 東京・代官山にあるアシックスオニツカタイガー直営店では、会計時にレシートと一緒に「またの来店をお待ちしております」と一言添えた手書きのメッセージカードを渡しています。週末は新しいお客様が多く、再来店を促す目的で行っています。

1対1の接客サービス業で活用しよう

 美容院・マッサージ院等は、1対1の接客サービスです。場合によっては1時間以上接触し、共有した時間内に一定の安心感・信頼感が結ばれます。その関係を次回来店に繋げるために、「Thanksメッセージカード」を積極的に配布しましょう。

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Step4.固定客育成アクション

4-0.基本的な考え方

顧客戦略/CRMの目的である「新しいお客様との出会いを創り、徐々に関係を深めて固定客に育成し、固定客で居続けてもらう」4つ目のステップが固定客育成アクションです。

数回購入したことがあるお客様に、定期的に通い続けるお客様になってもらうアクション(=固定客育成アクション)です。

多くの再購入客の心理→この先も通い続けたいと思っていない

再購入客は、お店のことをよく理解し、商品を何回も購入した状態で、お店に満足しているでしょう。ただ、多くのお客様はこの先もずっと通い続けたいと思っていないでしょう。

例えば、ある焼肉屋さんに、数回来店し、お肉がおいしく、価格もそれなりで、スタッフの対応も気遣いが行き届いていたとします。しかし、この先もずっと通い続けたいとは思っていないでしょう。それが普通です。

多くのお店の固定客育成アクションの課題

 →お客様1人ひとりへのキメ細やかな対応がない

再購入客を固定客に育成するには、お客様1人ひとりへのキメ細やかな対応を行い、お客様の琴線に触れることが大切になります。お客様に「私に対して特別に対応してくれるお店」と感じてもらいます。

今の時代、お客様全員に向けた一律の気遣いだけでは、固定客には中々なってくれません。今、日本で生き残っているお店の多くは、ある程度の気遣いができます。ある程度の気遣いは、お店の固定客を増やす決定打にはならないのです。ある程度の気遣いができないお店は、残念ながらすでに潰れているでしょう。

お客様が私だけの特別な対応に何回も出会った時にはじめて、この先もずっと通い続けたいと心から思ってくれます。

4-1.お客様を虜にする、自己実現イベント

 数回来店している再購入客は、ある程度商品・サービスについて満足しているでしょう。このまま何もしないと、固定客には育ってくれないことがあります。商品・サービスの質が一定以上なのは、当たり前になっているのが、今の時代だからです。固定客に育成には、商品・サービス以外の価値を提供する必要があります。その一つが「自己実現欲求」を満たすことです。

自己実現欲求とは何か(マズローの欲求段階説)

 心理学者マズローの欲求段階説によると、人間には以下5つの欲求があります。5つの欲求は、①→②→③→④→⑤の順番で段階的に満たされていきます。

①「生理的欲求」…食欲、性欲、睡眠、休養などの生命活動に直結した、基本的な欲求

②「安全欲求」…恐怖、不安、脅威、苦痛などの危険を避け、安定状態を保とうとする欲求

③「所属と愛情の欲求」…集団の一員として集団に所属したいという社会的欲求

④「尊重の欲求」…安定した自己に対し、高い評価や尊重、承認を求める欲求

⑤「自己実現の欲求」…自己充実を遂げた人が、個性を活かし、高次価値を求める欲求

 ここで言う自己実現欲求は、マズローの言う③「所属と愛情の欲求」④「尊重の欲求」⑤「自己実現の欲求」を指します。

自己実現を満たす3つのイベント

 では、固定客の自己実現欲求を満たすためにどんなイベントを実施すればいいのでしょうか。代表的な3つのイベントと、業種別にイベントテーマを挙げてみます。

①優越感を提供するイベント

 イベント参加者・参加作品から、優秀者・優秀作品を選ぶイベント。

テーマ例1.
スポーツ用品店主催のゴルフ・野球・サッカー・バレーボール・卓球等の「スポーツ大会」

テーマ例2.
惣菜屋主催の「お母さんの定番料理コンテスト」

テーマ例3.
居酒屋主催の「利き酒選手権2011年、チャンピオンは誰だ」

②自己アピールの機会を提供するイベント

 お客様が作り出した作品を幅広く公開するイベント。

テーマ例1.
俳句教室主催の「心に残る、俳句100展」

テーマ例2.
ブティック主催の「お客様がモデルのファッションショー」

テーマ例3.
写真店主催の「2011年 私の一押し写真発表会」

③価値共有の機会を提供するイベント

 お店とお客様の間で価値観を共有するイベント。

テーマ例1.
呉服店が主催する「日本の伝統芸能、歌舞伎鑑賞ツアー」

テーマ例2.
無農薬野菜店が主催する「秋の味覚、収穫イベント」

テーマ例3.
スポーツクラブ主催の「1週間で2kg減に挑戦。ダイエット挑戦週間」

発表の場をお店の外にも広げ、再購入客の満足を高める

 コンテスト・作品展を行う上で注意することがあります。それは、発表の場がお店に留まらないで欲しいということ。お店内に留まると、見る人が既存のお客様に限られてしまい、再購入客の満足度は、“そこそこ”に留まります。お店の外に発表の場を広げましょう。  

 ポスティングツール・新聞折込チラシ・エリア誌等、幅広く配布されるツールで発表し、参加した再購入客の自己実現欲求を十二分に満たしてあげましょう。

新規来店客獲得にも繋がる

 発表の場をお店の外に広げることは、副次的な効果をもたらします。今まで来店していない見込客が、お客様の作品が掲載されているツールを見て、お店とお客様の友好な関係を感じ取ります。それが来店に結びつくのです。商品・サービスの訴求ばかりのツールでは、お店とお客様がどんな関係を築いているのか、見えません。

自己実現イベントを定期開催するマイクロダイエット・東急ハンズ

 日本で200万人以上が愛用するマイクロダイエットを販売するサニーヘルスでは、毎年、「マイクロダイエット グランプリ(ダイエット成功者のコンテスト)」を行っています。日本全国で予選が行われ、東京で決勝大会が行われます。マイクロダイエット固定客の間で、このコンテストに出る、賞をもらうことがステイタスになっているようです。

 このコンテストは大々的に広告展開され、コンテストの詳細内容は雑誌としてコンビニエンスストアで無料配布されます。コンテスト参加者は、幅広く一般の方々に紹介されるのです。

 東急ハンズでは、自ら作った作品を展示・販売するフリーマーケット型のイベント、自ら作った作品を応募し、大賞を競うハンズ大賞を継続的に行っています。

4-2.関係を深める、ニュースレター

 毎日購入する食料品を除いて、商品には購入のタイミングがあります。消費者は、最初に頭の中でいくつかお店を思い浮かべ、その中から今回の目的にあったお店を選びます。大切なことはお客様が最初に思い浮かべるお店の中に入ることです。そこで提案したいのが、定期通信誌である「ニュースレター」です。

 ニュースレターとは、新規顧客・再購入客を固定客に育成するのに最適なツールのことです。新商品発売・キャンペーン告知DMといった売上獲得を目的としたものではなく、お店とお客様との継続的な関係づくりを目的にします。

ニュースレター8つの内容

①特集記事

 テーマはその時々で考えると必ず行き詰ります。年間スケジュールを必ず組みましょう。お店で実施したイベント報告、今お客様の関心の高いトピックスの詳細解説等がテーマとして考えられます。

 基本的にお客様の視点から情報を伝えます。イベント報告であれば、お客様からイベントがどう写ったのかを中心に記事を構成します。

②お客様の声

 お客様に信頼性の高い「お客様の声」を通じて、お店の姿勢・サービスを知ってもらいます。お店がお店のことを語っても、どうしても自慢や売り込みに思われてしますことも…。お客様からの声だからこそ、お客様の耳に届きます。お店のファンお客様にインタビューし、自分とお店の関係について語ってもらいます。

③啓蒙情報

 インターネット登場後、お客様が自ら手軽に情報を得ることができるようになりました。しかし、一部の方を除いて、知識が不足しているのが通常のお客様です。お店から、詳細な正しい知識を整理して伝え、お客様を啓蒙します。お客様を啓蒙することで、お客様からの信頼を獲得できます。CRMを推進するお店では、お客様からの信頼をベースにビジネスをするので、啓蒙情報の発信はとても重要です。

④新商品・サービスの紹介

 取り組むことに至った経緯・作り手の想い等、裏話を切り口に紹介します。既存お客様しか読まないニュースレターならではの情報になります。

⑤店長コラム

 一定規模のお店になると、お客様と店長は直接話をする機会がほとんどありません。店長がお客様に自らの想いを伝えることができないのです。特集記事・啓蒙情報を切り口にしながら、お店がお客様とどんな関わり合いを持ちたいのか、伝えることができます。このコラムは、スタッフへのメッセージにもなります。

⑥最新業界ニュース

 業界新聞・業界雑誌等に掲載されている専門的な情報の中から、お客様の関心が高い情報を提供します。常に最新の情報を入手している、プロフェショナルなお店であることを伝えます。

⑦地域情報

 お店ビジネスは商圏・地域との結びつきが大変強いので、地域の行事・イベント・出来事をお知らせするコーナーを設けることで、地域密着のお店であることを伝えます。

⑧オリジナルコーナー

 ビジネスとは直接関係のない内容で、読者に一休みしてもらうコーナーです。料理のレシピ、生活の知恵袋、おそうじのコツ、スタッフのお勧め本等がテーマとして考えられます。

ニュースレター実施のポイント

①ボリューム→A3表裏2つ折

 ボリュームがありすぎると、発行するお店も読むお客様も大変です。A3版表裏の2つ折(A4:4P)が適当です。内容の濃さよりも続けることが重要です。スタート時は、A4表裏でもOKでしょう。

②デザイン→雑誌・新聞風デザイン

 ニュースレターは、キャンペーンDMのように告知が目的ではなく、じっくり読んでもらうことが目的です。お客様が普段読み物として認識している、新聞・雑誌のデザインを参考にします。

③発行頻度→隔月程度の発行(年間6回程度)

 毎月だと少し頻度が短すぎ、3ヶ月だと忘れられる心配があるので、隔月をおすすめします。但し、お客様の来店頻度・取扱商品の購入頻度との関係もあるので個別の検討が必要です。

④一工夫→固定客&ファンお客様向け手書きコメント

 固定客・ファンお客様に送付するニュースレターには、担当スタッフが手書きコメントを一言加えましょう。

様々な業種で行われているニュースレター

 現在私の手元には、住宅会社・健康食品の通販・自動車ディーラー・お米屋さんからニュースレターが送られてきます。特に住宅会社のニュースレターは、社長コラム、家づくりワンポイント講座、Q&A、スタッフ紹介、料理レシピ、子育てのヒント、お勧めホームページ等、お客様との関係性を意識した内容で作成されています。

4-3.お客様起点のディスプレイ

 再購入客の来店頻度を高めることで、固定客・ファンお客様に育成するために、売場ではどんな工夫ができるでしょうか。

 多くのお店は季節に応じて提案商品を考え、いかに商品を魅力的に見せるかに神経を集中します。顧客戦略/CRMを推進するお店では、それにお店とお客様との関係性を加えた「お客様起点のディスプレイ」を展開しましょう。

 例えば、固定客の商品活用法・体験談を公開するディスプレイ、お客様の購入商品をランキング順で公開するディスプレイ、お客様の作品を公開するディスプレイ等が考えられます。

 お客様起点のディスプレイを展開する際に、注意していただきたいことがあります。それは情報量を絞ること。お客様が売場を見た時にあまりに多くの情報を受け取ると、その情報量に圧倒され読む気になりません。

 情報を絞ることはお店にとってもメリットがあります。ディスプレイはお客様が来店の度に楽しんでいただけるように、定期的に内容を変えることが常識になっています。実はそのテーマを考えるのが毎回大変なのです。情報量を絞ると、1回あたりの情報量が減り、売場テーマのアイデア枯渇を防いでくれるのです。

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Step5.固定客維持/ファン育成アクション

5-0.基本的な考え方

顧客戦略/CRMの目的である「新しいお客様との出会いを創り、徐々に関係を深めて固定客に育成し、固定客で居続けてもらう」5つ目のステップが固定客維持/ファン育成アクションです。

定期的に通い続けるお客様にそのまま通い続けてもらう、口コミの発信源になるファンになってもらうアクション(=固定客維持/ファン育成アクション)です。

多くの固定客の心理→お店と心の奥底で繋がっていない 

固定客は、継続的に通っている状態で、十分満足しているでしょう。ただ、多くのお客様は、お店と心の奥底で繋がっていないですし、口コミの発信源にもなっていないでしょう。

例えば、あるスーツ屋さんで、3年間で10着以上のスーツを作っていて、自分だけの特別な対応があったとします。十分満足はしていたとしても、新しいお客様を一度も紹介したいことがない、一生涯に渡って通い続けたいと思っていないこともあるでしょう。

多くのお店の固定客維持/ファン育成アクションの課題

 →お客様1人ひとりと心の奥底で繋がるアクションがない

固定客でずっと居続けてもらう、紹介をしてくれるファン客に育成するには、お客様1人ひとりと店長/スタッフが心の奥底で、繋がっていることが大切になります。お客様に私になくてはならないお店と感じてもらいます。

固定客に向けたアクションは、つい「あのお客様はウチの固定客だ」と安心して、アクションが甘くなってしまうことも…。それでは、固定客でもいずれお店から離れてしまいますし、ファンになってくれません。関係が深まっているからこそ、さらに関係を深めていくアクションが大切なのです。

お客様が店長/スタッフと心の奥底で繋がる機会に何回も出会った時にはじめて、このお店と生涯に渡ってお付き合いしたい、新しいお客様を紹介したいと心から思ってくれます。

5-1.他愛ない会話で気遣い・配慮を感じてもらう

 商品・サービス内容を伝える通常の「ビジネスコミュニケーション」の重要性は皆さん、ご存知だと思います。一方で、商売・ビジネスはこれだけではないことも日々感じていませんか。

 特に、継続的に来店している固定客との関係をさらに深めるには、ビジネスコミュニケーションだけでは限界があります。なぜ、限界があるのでしょうか。それはビジネスコミュニケーションが理論・論理に基づいているからです。理論・論理は一見万能に見えますが、そうではありません。

根回しという日本の伝統

 日本の伝統的な企業では、案件を会議で通すのに、理論・論理だけでは不十分です。根回しが必要です。根回しは、会議出席者に事前に話を通すことで「あなたは重要な人です。あなたに配慮しています」というメッセージを伝えるために行います。この事実は多くの日本人が理論・論理とは違う世界観、気遣い・配慮を大切にしていると言えます。

 お店ビジネスにおいても、スタッフからお客様へ、気遣い・配慮を伝える必要があります。では、具体的にどんなコミュニケーションを行えばいいのでしょうか。

他愛のない非ビジネスコミュニケーション

 お店ビジネスでは「他愛のない非ビジネスコミュニケーション」でスタッフの気遣い・配慮をお客様に感じてもらいます。代表的な例を挙げます。

①体調への配慮のお話

 「最近、風邪が流行っているみたいですね。○○さんは、大丈夫ですか」

 「先日、咳をされていましたけど、その後、具合はいかがですか」

②天気のお話

 「今日は夕方まで雨が降り続くようです。足元にお気をつけくださいね」

 「今日はいいお天気ですね。明日は少し曇るみたいですよ」

③地域行事のお話

 「今週は○○神社のお祭りですね。今年も行かれますか」

 「来週の日曜日は、○○高校の文化祭ですね」

④ お子さん、お孫さんのお話

スタッフ「お子さん、小学校何年生になったんですか」

お客様  「もう、3年生になったんですよ」

スタッフ「そうですか。子供の成長は本当に早いですね」

お客様  「そうなのよね」

 その他にもいろいろ考えられます。但し、政治、宗教のようなデリケートな話題は避けたほうが無難でしょう。

行商で取り組む“他愛のない非ビジネスコミュニケーション”

 ある企業が豆腐の行商ビジネスを行っています。毎日100人がリヤカーで朝9時から夕方6時まで、豆腐を売り歩くのです。  

 商品は、国産大豆を使った豆腐で1丁300円と安くないのですが、高齢者を中心に固定客を獲得しています。その秘訣は「お孫さんは4歳でしたよね」「元気があって困るのよ。こないだもね…」と商品と関係のない会話をすること。売上上位の優秀なスタッフは商売と関係ない非ビジネスコミュニケーションを数多くのお客様と交わしています。

固定客・ファン以外の実施には注意が必要

 お客様育成がそれ程進んでいない新規来店客・新規購入客への実施は、慎重さが必要です。関係が築かれていないのに、他愛のない非ビジネスコミュニケーションを投げかけると、お客様に馴れ慣れしいと思われてしまう可能性があるからです。すでにお店に馴染んでいる固定客だからこそ受け入れてもらえるのです。

大切なのはバランス

 今まで非ビジネスコミュニケーションのお話をしてきましたが「ビジネスコミュニケーション」の重要性は変わらず存在します。「ビジネスコミュニケーション」と「他愛のない非ビジネスコミュニケーション」はどちらかがお客様育成に優れているわけではなく、大切なのはそのバランスです。

 最適なバランスは、お客様一人ひとり違います。スタッフと他愛のないコミュニケーションを交わすことに積極的なお客様もいれば、その逆もあるからです。

多くの大手チェーンでは実践できない

 大手量販チェーンでは、他愛のない非ビジネスコミュニケーションに取り組むことはないでしょう。どんな会話に発展するかわからず、マニュアル通りにいかないからです。大手量販チェーンと競合している顧客戦略/CRMを推進するお店では、この非ビジネスコミュニケーションを実施することが重要になります。明確な差別化に繋がります。

5-2.限定感を演出する、特別扱いイベント

 お客様は、自分が継続的に来店している、知り合いにお勧めしているお店では、自然と特別扱いを求めます。自分が企業・お店に貢献していると感じているので、それ相応の対応を期待します。

 お店・スタッフはその期待に応えているでしょうか。日頃の接客場面では様々なお客様が行き交うので、特別扱いが難しいのが現実です。そこで、実施すべきなのが限定感を演出する特別扱いイベントです。

特別扱いイベントのターゲット&テーマ

 特別扱いイベントは、参加者を固定客・ファンに限定します。ホテルで実施したり、楽器の生演奏会を実施したりと、特別扱いされていると感じることが重要になります。

業種別:特別扱いイベントテーマ例

 ここでは業種別にイベントテーマを挙げてみます。

①レストラン

 「ご愛顧感謝パーティー開催。○○シェフの新作メニュー食べつくし」

②メガネ店

 「当店で3本以上ご購入のお客様限定。○○ホテルでお食事&販売会」

③マッサージ店

 「100ポイント以上のカード会員限定。高級レストラン○○のランチご招待。特別メニュー“体の疲れが取れるコース”をご賞味ください」

④ブランドショップ

 「お世話になっているお客様限定。新作バック先取り、事前予約販売会」

⑤自動車販売店

 「お友達をご紹介いただいたお客様限定。F1日本グランプリ応援ツアー」

ダイレクトメディアを組み合わせて集客する

 固定客・ファンの集客は、DM・ハガキ・メール・FAX・TEL等のダイレクトメディアが中心です。これらのメディアを組み合わせることが集客成功のポイントです。「事前メール→DM送付→ハガキフォロー」「DM送付+メールフォロー」等、様々なパターンがあります。当初は試行錯誤が必要ですが、最も効果の高いアクションパターンを見つけ出します。

来店が遠ざかったお客様こそ、お誘いする

 固定客・ファンの中には、最近来店から遠ざかっている人がいます。多分、他店で購入をはじめているのでしょう。

 特別扱いイベントの開催は、このような離脱予備軍と再びコミュニケーションを交わすチャンスです。通常時に「来店してください」とお願いするよりも、イベントの案内を切り口にコミュニケーションを交わす方がスムーズだからです。特別扱いイベントは、固定客・ファンの離脱防止の手段にもなるのです。

イベント参加後の満足度アップの仕掛け

 女性の場合、友人同士でイベントに参加する場合が数多くあります。イベント終了後、女性は購入した商品を見せたい、商品を見てもらい「それ、いいじゃない。あなたに似合うわよ」と言って欲しいのです。そんな場面があると、イベント参加の満足度がさらに上がります。イベント会場近くの喫茶店と提携し、無料券を配布することで、イベント主催者自らその場面を作り出すことができます。

 レディースアートネイチャーでは、展示・試着イベント後、近くの高級喫茶店のケーキセット券をもれなく進呈しています。試着の感想を友人同士で語り合う機会を提供しています。

百貨店で行われる固定客・ファン限定イベント

 ある百貨店では固定客限定イベントを年2回、東京と大阪で開催しています。東京会場では平日開催(3日間)にも関わらず、2,800組が来場。宝飾品や美術品に加えて、豪華客船でのクルーズ旅行・高級旅館での宿泊等の販売も開始し、今後も品揃えを充実させるとのことです。

5-3.パーソナルメッセージで立場を超える

 多くのお店では固定客・ファンの他店への流出防止を目標に掲げます。しかし、中々実現しません。それはお店・スタッフと固定客・ファンの間に、買う側と売る側の立場を超えた関係が中々できないからです。その関係を作るためには、お客様の心に届くメッセージをお店・スタッフから発信することが重要です。それに最も適しているのが「パーソナルメッセージ」です。

パーソナルメッセージとは

 パーソナルメッセージとは「固定客・ファン一人ひとりのパーソナル(個人的)な内容を含んだメッセージ」です。来店後、商品購入後、毎年決まった時期にお客様毎に届けるものです。

パーソナルレター作成テクニック5

①文章の内容→お客様1人ひとり違うオリジナルな文章

 お客様1人ひとり違うオリジナルな文章にします。誰でも対応できる形式的な文章は、固定客・ファンの心に響きません。しかし、文章を一生懸命書きすぎると以下3つのケースに陥り、文章がわかりづらくなるので注意しましょう。

 ・一つの文章が長すぎて、何が言いたいのかわからない

 ・一つの段落が長すぎて文章が詰まって見える

 ・文字が小さすぎて見えづらい

②文章のトーン→親しみ&気遣い

 親しみを感じながらも、気遣いを感じるソフトな文章にします。文章から感じるイメージは、馴れ馴れしくても、堅すぎても適切ではありません。

以下③~⑤はレターの場合、大事になります。

③切手&ハガキ→記念切手&オリジナル台紙

 料金別納郵便、官製ハガキは使わず、ショップコンセプトに合った記念切手・ハガキ台紙を使います。

④制作→プリンター活用

 宛名・文章ともにプリンターで出力します。パーソナルレターは文章が長いので、時間的な問題・文字の上手下手の問題から、手書きでの標準実施には限界があります。

⑤プラスコミュニケーション→手書きコメント

 一言手書きコメントを加えます。手書きには書いた人の温度が伝わります。

パーソナルメッセージの基本3種類

①購入御礼メッセージ

 商品購入後に、購入御礼レターを送ります。最もオーソドックスなパーソナルメッセージです。

 小売業では、購入御礼の他、購入商品のメンテナンス・使い方のアドバイスを内容にします。皮製のバックを販売した場合、デザイン・縫製の特徴、クリーム等を使ったお手入れ方法、雨に濡れてしまった時の対処法が内容になります。

 また、飲食店では、注文したメニューの中で、特に満足度が高かった料理について、素材・調理法へのこだわりを説明します。

②来店御礼メッセージ

 同じお店ビジネスでも、サービス業と飲食業は来店イコール購入ですが、小売業は来店しても購入に至らない場合があります。その場合でも来店自体の御礼メッセージを送ります。

 来店御礼の他、お客様が関心を持っていた商品について接客時に説明した内容、その時に説明できなかった隠れた特徴等を内容にします。来店御礼レターは、高級ブランドショップでよく行われています。

③四季折々のご挨拶レター

 日本には四季折々にハガキを送る習慣があります。来店・商品購入とは関係のないタイミングで送り、日頃の感謝の気持ちを伝えます。年賀状・暑中見舞いの時期は誰もが手紙を送るのであまり印象に残りません。あえて時期を外し、深い印象を残す方法もあります。

まとめ

いかがでしたか。この5つの活動によって、「新しいお客様との出会いを創り、徐々に関係を深めて固定客に育成し、固定客で居続けてもらう」という、顧客育成の目的が実現できます。

業種ごと、エリアごとで使える活動、難しい活動があったと思いますが、自社・自店にあった内容をセレクトしてご活用ください。

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