一体感・マインド

Vol.47 人を幸せにする接客をどう届けるか

前回のコラムでは「人を幸せにする接客」を最新の幸せ研究から、
「さまざまな喜楽を伴った感情の起伏が、小さくても良いので、
数多くお客様に生まれる接客』と定義付けました。

今回は、人を幸せにする接客は「具体的にどんな接客場面なのか」「誰がその場面を届けるのか」というお話をしたいと思います。

どんな接客場面なのか?

まず、具体的に「どんな接客場面なのか」ですが、〝お客様としての自分〟の感情が動くときを思い浮かべてみてください。

■〝お客様としての自分〟の感情をスタッフがよく分かってくれとき 
「そうなんだよ。分かってくれて嬉しいなあ」≒共感する場面

■〝お客様としての自分〟の感情をスタッフが刺激してくれたとき
 「なるほど!そうだったんだ。」≒共振する場面

■〝お客様としての自分〟の感情とスタッフの感情が共になったとき
 「本当によかった。スタッフさんも喜んでくれて嬉しいなあ」≒共有する場面

こんなお客様と共感、共振、共有する場面だと思います。

誰が届けるか?

ではそのお客様の感情が動く場面は、誰が届けるのでしょうか。
最近AI・ITによる接客の進化が目覚ましく、効率が求められる店舗では、徐々にその活躍の場が広がっています。
とはいえ、お客様の感情が動く接客は、AI・ITには向いていません。

なぜなら、お客様の感情を動かそうと思ったら、お客様の感情の状態、
微妙な動きを察知して、応対する必要があるからです。
人の感情は外から見えづらいですよね。
眉間にシワがよっているからといって、不機嫌ではないお客様はいます。
逆にニコニコしているけど、愛想笑いの場合もあります。
でもなぜかわたしたちはそれを感じることができます。
人(お客様)の感情の理解は、人(スタッフ)の方が理解が深いと考えています。

AI・ITを使って、人(=お客様)の心理を読み取れる状況が技術的に可能になったとしても、当分の間は、お客様側に抵抗があるのではないでしょうか。

「人を幸せにする接客」を進めようと思ったら、接客はIT・AIではなく、「人(スタッフ)」が行う必要があることに、変わりはないでしょう。

ある週末の物語

〝人による接客の大事さ〟を具体的にイメージいただくために、ある人(お客様)の週末をテーマに、「接客がなくなった週末」と「ステキな接客を受けた週末」を「物語」にしてみました♪
ちょっと長目ですが、ぜひお読みください。

接客がなくなった週末 

半年後に車検を迎えるタイミング、カーシェアなどの選択肢もある中で、ネットを見ていたら気になる車があって、今日の午前中は、自動車ディーラーに実車を見に行くことにした。
前日ネットで予約をして、入口のセンサーにQRコードをかざして、店舗に入った。
ここは無人店舗なのだ。気になっていた車の色と運転席の乗り心地を確認できた。
タブレットが置いてあり、分からない点は、キャラクターが動画で解説してくれた。
車の知識が少ない私にはちょっとわからないワードもあったけど、ま、いいかな(笑)。
来店目的がクリアできて、お店のドアを開けると、来店お礼のコールが自動で流れて、ドアが施錠された。お店を出てちょうど10分後に、登録したメールアドレスに、今後の希望をアンケートで聞かれたので、見積書が欲しい旨をチェックした。
翌日、メールで送ってくれるみたいだ。

ランチは、ネットで口コミ評価が多かったイタリアンにした。
お店に入ったら、ロボットがお出迎えをしてくれて、空いている席に案内してくれた。
席についた瞬間に、タブレットで今日のおすすめメニューの動画が流れた。
今日は久しぶりに、ピザを食べよう。タブレットで注文をして、配膳ロボットが料理を運んでくれた。美味しい。食べ終わったので、タブレットで会計ボタンを押した。
自動支払い機で、カード決済した。ドアを開けると来店のお礼コールが流れた。

午後は、自宅に帰ってアパレルサイトでネットショッピング。
最近流行っているモード系のシャツを買おうと思ったが、今まで買ったことがないデザインだった。ARで試着ができたが、勇気が出ずに(笑)カゴに入れたままでショッピング終了。

夕方、小腹がすいたので、コンビニエンスストアで大好きなモンブランを買いに行った。
このコンビニは、センサーで商品購入を認識しているので事前登録しているクレジットカードで決済してくれるので会計手続きはナシ。夕食のお弁当とビールも買った。
最近のコンビニは基本、無人店舗だ。
夜はTVでプロ野球・Jリーグをザッピングしながら観戦して、その後、ネットサーフィンで一日終了。

ステキな接客を受けた週末

今日の午前中は、自動車ディーラーに実車を見に行くことにした。
お店に入ると、清潔感があるスタッフさんが明るい雰囲気で出迎えてくれた。
今日のお天気の話、来店の理由など、ざっくばらんに話をした。(セールスする感じではなく)
お店にいる時間を楽しんで欲しいという気持ちを感じる接客で心地よかった。
気になっていた車の色と運転席の乗り心地を確認できた。スタッフさんが今見えている色・日に当たった時の色・夜ライトに照らされた時の色の違いもお話してくれた。運転席の乗り心地も他メーカーとの違い・その土台になった開発者のちょっと変わった考え方・素材開発の裏話をお話してくれた。いろいろと細かい点もスタッフさんに聞いてみた。私の知識レベルに合わせてユーモアを交えながら、教えてくれた♪ その場で見積を頼んで出してもらい、持って帰った。
帰り際に、同じ車輌を購入したお客様の話をしてくれたり、これからの私のカーライフに想いを馳せて話をしてくれた。購入へのテンションが上がった!

ランチは、イタリアンレストランに入った。女性スタッフがあたたかいお出迎えをしてくれた。
席の希望を聞いてくれて、窓際の明るい席を案内してくれた。席につくと、今日のおすすめ料理を自信たっぷりに(笑)ニコニコしながら、説明してくれた。今日は久しぶりに、ピザを食べようと思っていたが、昨日農家から届いたというパクチーのパスタが美味しそうだったので、急遽パスタに変更した。
スタッフさんが料理を運んできてくれた。おすすめの食べ方(最初はそのまま、続いてチーズたっぷり、最後にタバスコをちょっと投入)も教えてくれた。とっても美味しかったなあ。
会計をレジで済ませた。対応してくれたのは、エプロンを付けていたので、料理を作ってくれた人かな。
パスタがとても美味しかったことを伝えた。シェフも嬉しそうにしてくれて、私も嬉しかった。「また来てくださいね♪来月は美味しいトウモロコシが入るので、美味しいメニューを思案中です(笑)」とのこと。
また来ようかな♪

午後は、自宅に帰ってアパレルサイトでネットショッピング。
モード系のシャツを買おうと思ったが、自分に似合うか心配になり(笑)、ZOOMでオンライン接客を受けた。画面越しに私の体形・イメージを掴むことができたのか、スタッフさんが熱心に勧めてくれて、そのままネット通販で購入した。今まで買ったことがないデザインは、誰かの後押しが必要だなあ。
シャツが届くのが楽しみだ。新しいファッションに挑戦しちゃったなあ、どんな感じになるかな~♪

夕方は、ネットでちょっと噂になっている地元のケーキ屋さんでモンブランを買った。
イートインコーナーがあったので、職人さんがケーキを作っている姿をガラス越しに見ながら、ケーキを食べた。ウチで食べるよりも、美味しく感じたかも!。
帰り際に職人さんと話すことができた。

夜は、久しぶりに野球場でプロ野球をリアル観戦。
見知らぬ人と一緒に応援したり、喜んだり、がっかりしたり、ビールの売り子さんとちょっとしゃべったり、愉しかった!家に帰ってから野球場に行った人のツイッター・インスタを見ながら今日のリアル体験を復習(笑)して一日終了。とっても良い一日だったなあ。

まとめ

「接客がなくなった週末」この世界が不幸かというと、もちろんそうではなく、そんな週末を望むこともあると思います。ただ、接客がなくなった未来は、どこか幸せを感じられない・味気がないと思いませんか。

なぜそう感じるのか、結局、人が幸せを感じるのは、人と何かを共にした時だからです。
人が「幸せを感じる」「豊かさを感じる」「味気のある」「実感のある」人生を送ろうと思った時に、人と接する場面は必要です。人は人が好きなんですよね♪

〝人による接客〟は、社会・地域で幸せな場面、豊かな場面を創り出すことができます。
〝人による人を幸せにする接客〟は、これからもずっと残るでしょう。

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