顧客戦略の基本

Vol.56 ファン育成/LTV最大化を進める将来的な意味

ファン育成・LTV最大化を進める 将来的な意味

未来を切り拓くポジティブ視点

「繁栄―明日を切り拓くための人類10万年史」(マット・リドレ著)という本です。
人類10万年を紐解いて、「人類の分業化・専門化」「革新(イノベーション)」に
よって、モノ・サービスの交換が促され、「時短・便利」「労働時間の短縮」
「自由・趣味時間の増大」に繋がり、平均的な人の暮らしが徐々に良くなってきた
ことを、あらゆるデータで示した本です。ポジティブな見方で語られています。

一方でニュースは、「最近30年間のGDP(国内総生産)・1人あたりGDPの推移」
「人口減」「少子高齢化」「仕入原価・人件費高騰」がネガティブな見方で語られる
ことが多いですね。

昨今、エビデンスの重要性が言われていますが、ポジティブな見方、ネガティブな見方、
両方ともにエビデンスがあるんですよね(笑)。
そんななかでも、どうしても世の中は、ネガティブな文脈で語られることが多いように感じます。
その傾向はマスメディアでも、ネットでも同じです。
ネガティブな事は多くの人の注目を集めやすいからでしょう。

私自身普段、自らの専門分野であるファン育成/LTV最大化の必要性をお話する際に、
「日本の人口減」「少子高齢化」というネガティブな見方を中心にお話していることが多いです。
今回のメルマガでは、これからの未来を見据えて、ポジティブな見方から、「ファン育成/
LTV最大化」の必要性について、お伝えしたいと思います。

ファン育成/LTV最大化を進める、将来的な意味

付加価値にお金を払う人が増えていく

野村総研が定期的に行っている「生活者1万人アンケート調査」(2000年、2003年、
2006年、2009年、2012年、2015年、2018年、2021年)では、4つの消費スタイルの
構成割合の推移を調査しています。

2021年「安さ重視のお客様は24%」「付加価値重視のお客様は24%」で同数でした。
2000年の段階では「価格重視のお客様は40%」「付加価値重視のお客様は13%」でした。
この約20年で「安さ重視のお客様」が大きく減って、「付加価値重視のお客様」が
大きく増えました。「安さ重視のお客様」と「付加価値重視のお客様」を比べたら、
「安さ重視のお客様」が多いというのは、今から20年前、ひと昔前の結果です。
今は「安さ重視のお客様」と「付加価値重視のお客様」は同じくらいというのが最近の結果です。

※調査結果について詳しくは野村総研(NRI)のホームページ(以下ページの中程です)をご覧ください。
https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2021/cc/1119_1

これまでの20年間の傾向がこれからも続くと考えています。
「安さ重視のお客様」が減っていき、「付加価値重視のお客様」が増えていく傾向です。
一定の衣食住が整った日本の消費者は、「質の高いモノ・サービス(=基本価値)」
に加えて、「高いココロの価値(=付加価値)、精神的な満足」をより求めるからです。
将来的に増えていく「付加価値重視のお客様」と永くお付き合いできる方法が、
ファン育成/LTV最大化です。ビジネスは増えている顧客層を狙うのがセオリーです。

人生100年時代、ファンで居続けてくれる時間が伸びる

人生100年時代と言われていますが、国立社会保障・人口問題研究所が公表した
「日本の将来推計人口」では、2065年の日本人の平均寿命は女性91歳、男性85歳
です(内閣府:2022年発表:高齢社会白書)。

40年後でも100年にはまだ遠いと思うかもしれません。ただ平均寿命は統計上、
死亡する人が最も多い年齢よりも低くなります。出生時に亡くなる人もいるからです。

2020年の平均寿命は女性88歳、男性82歳ですが、死亡する人が最も多い年齢は、
女性93歳、男性88歳です。2020年で人生90年はすで実現しています。
これからも寿命は延びていくでしょう。
世界的に見ても、30年以上前の1980年代後半から、世界の新生児の数は減り続けて
いるものの、世界人口が拡大しているのは、寿命が延びているからです。

医療技術、再生医療、バイオなどのイノベーションで、50代にしか見えない、気持ちも
50代の高齢者(65歳以上)も増えるかもしれません。見た目も気持ちも変わらないなら、
高齢になっても消費スタイルが変わらない可能性もあります。
これから高齢になる人には、子供がいない単身者・夫婦の割合が増えていくでしょう。
財産を後に継ぐ人がいないので、自分の資産を自ら使う人も増えると思います。

ファンが元気に長生きしてくれれば、企業から見るとお金を払ってくれる時間が長くなり、
LTVが上がります。
例えば、ファン育成/LTV最大化に取り組むことで、平均的なファンがブランドから離れる
離脱年齢を65歳から70歳に5歳引き上げることができたとします。
そうなれば、50歳(2023年の日本人の平均年齢は48.4歳です)でお客様になってくれたファンが今までだったら65歳で離脱していたのが、70歳まで購入してくれることになります。
ファンで居続ける期間が5年間増えます。

15年間年20万円購入してくれると生涯売上が300万円ですが、20年間年20万円購入
してくれると生涯売上が400万円になり、生涯売上(LTV)が100万円増えることになります。
33.3%も売上が増えます。
ファン育成/LTV最大化に取り組むメリットが、将来を見据えると大きくなります。

ファンで居続けてくれる年齢の伸長によるLTVの拡大

マーケティング・商品は変わっても、お客様は変わらない。

10年先を想像してみると、「売れている商品・サービス」「主役になっているデジタル
マーケティング手法」「メインになっているSNS」「流行りの店舗デザイン」、その土台
となっている技術は、大方変わっているでしょう。

そんな中で唯一あまり変わらないことがあります。お客様です。

「対象となる見込のお客様」と「既存のお客様」です。
もちろん今30歳のお客様は10年後は40歳になり、60歳のお客様は70歳になり、
引っ越してくる人、他に引っ越してしまう人はいますが、大方変わりません。

そんな変わらないお客様の中で、特にお金を払ってくれる「既存のお客様」の存在は重要です。
例えば10年間買ってくれた既存顧客のAさんは、その間ずっと収益をもたらしてくれます。
買う商品は変わっているでしょう。店舗も改装しているかもしれません。
担当するスタッフも変わっているかもしれません。でもAさんというお客様の存在は変わりません。

顧客データベースが広がる前、「万一、会社・店舗が災害にあった時に、顧客台帳だけは
持って逃げろ」というお話がありました。
商品はまた作ればいい、店舗も社屋も建て直せばいい、ただお客様はすぐに作れないからです。
今後の経営で、極めて重要な既存顧客をケアして大切にするのが、ファン育成/LTV最大化に
なるでしょう。

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