定義がバラバラでは意味がない
去年衆議院選の際、首相指名を誰にするのか、どの政党が与党になるのか、政党同士の政策協議など、
ネット・TV・新聞を騒がせていましたね。
個別の政策を見ると、年収103万円の壁(所得税がかかるかどうかのボーダーライン)をどうするか、
アルバイト/パートさんの協力の上で成り立っている店舗では、関心の高いテーマです。
投票の前、投票結果が出てからも、政策についていろいろと
探ってみたのですが、わかりづらいことが多いですね…。
なぜ、わかりづらいんだろう…とその理由を考えていくと
使われている言葉の「意味合い・位置付け≒定義」が、
言っている人によって違うことに気が付きます。
「裏金(何を持って裏金なのか?)」
「改革(どのくらいの変化を持って改革としているのか)」
「格差問題(どこまで差があると格差があると考えるのか?)」
「減税(所得税からの減税か、消費税がらみの減税か)」について、
同じ言葉を訴えていますが、言っている人によって、そのワードが
意味している中身、位置付けが違うのです。
そうなると、話を聞くなかで、この人が言っている言葉の
「意味合い・位置付け≒定義」に注目しながら聞かなくては
いけないことになります。その辺りをあいまいにしている人もいて…。
マーケティングの世界でも、よく同じことが起きています。
例えば、「ブランド」「ファンづくり」というワードですね。
社内で話している中で、個人個人でそのワードの「意味合い・
位置付け」が違うなかで、ディスカッションしていると、深まりません。
空回りしてしまうのです。
ここでいう空回りとは、社内でディスカッションしている時に、キーワードが
飛び交っているだけで具体性がある話まで議論が進まないケースです。
お客様への活動の進化まで行き着けず、お客様からみると何も変わって
いないので、期待される成果が見えてきません。
年末に「LTV最大化」をテーマにした出版を控えていまして、ここ数年、
LTVについて深堀していたのですが、「LTV」というワードでも、同じような
状況が起きています。
今、LTVはどんな「意味合い・位置付け≒定義」で使われているのでしょうか。
大きく捉えて4つの意味合い・位置付けがありました。
今回のメルマガでは、LTVの4つの意味合い・位置付けについて、
世の中に登場した順番から整理してお届けしたいと思います。
今後のマーケティング戦略のキーワードである「LTV」について、
確かめておくことは、今後を考えると有益だと思います。
LTV、4つの意味合い・位置付け
1つ目「数値目標・KPI」としてのLTV
1つ目は「One To Oneマーケティング」「CRM」を進めた成果を数値で測る
「KPI」としての位置づけです。約30年前にLTVが登場した時の位置付けです。
例えば「既存顧客全体の直近5年間のLTVの平均は、どのくらいの数値になりましたか?」、
「Aランク顧客の直近1年間のLTVの目標は10万円ですが、現時点でいくらまで
届いていますか?」という会話でLTVが使われた時がそれにあたります。
通常、LTVがKPIになる前段階で「ウチの優良顧客は(お客様になってから先月までの)
LTVは、どのくらいなのか?」、現状把握としてLTVに関心が払われて、それから
KPIに発展していくことが多いです。
2つ目「広告費選定の目安」としてのLTV
2つ目はネット通販で主に活用されている位置づけで、「広告費選定の
目安」としてLTVが活用されているケースです。
ネット広告の費用が上がるなかで、競合に競り勝つ目的で、CPO(1購入数
あたりにかかった費用)をどこまで許容できるのか計算するためにLTVが
使われるケースです。
例えば「ここ3年で獲得できたお客様は、平均8カ月継続購入してくれています。
LTVは売上〇万円、利益〇万円なので、CPAが〇万円まで上がっても大丈夫です。」
という場面でLTVが使われた時です。
リアル販売においては、「新規客の内、2割が3回以上購入のお客様に育って
くれます。1回のみのお客様も合わせて平均LTVが〇万円になります。
各店でエリアを絞ってチラシを展開して、〇%の反応があれば、費用対効果が合います。」
というケースです。今はこのようにリアル販売で、LTVが使われていることは少ない
ですが、これから広がるでしょう。
3つ目「理念・理想」としてのLTV
3つ目はお客様と関わりを深めて生涯に渡ってお付き合いしていく、企業とお客様との
関わり方の「理念・理想」を示す言葉として活用されているケースです。
「One To Oneマーケティング」「CRM」が担っていた「お客様一人ひとりと関わりを深めて、
ファンに育てて売上・利益を上げていく」という概念・考え方をLTVが引き継いでいます。
「ファンづくり」「顧客ロイヤリティ向上」というマーケティングの基本方向も包括して、
意味付けられています。
例えば「これからはLTVを大切にしていかないと、人口が縮小していく中で、売上が減って
しまうのではないか」、「これからの店舗スタッフは、LTVの意識を高める必要があるのでは
ないか。そのための教育を進めよう」というケースで、一見KPIとして表現されていそうですが、
その発言をしている本人は具体的な数値をイメージして表現している訳ではありません。
理念・理想としてLTVという言葉を使っています。
4つ目の顔「活動の方向性」としてのLTV
最後の4つ目は、「LTV最大化=具体的な手段を用いてLTVを最大にしていく」ことを、
「LTV」と表現しているケースです。3つ目の「理想・理念」に加えて、理想・理念を実現する
具体的な活動も含めてLTVと表現しています。
例えば「LTV、現場で順調に進んでいるのか?」という会話で出てきた時です。
言葉を補足すると「LTV“を最大化する目的で行われている具体的な活動は”
現場で順調に進んでいるのか?」という言葉に言い換えられる時です。
ここでいう具体的な活動は、リアル販売で考えると、「接客」「店舗・売場づくり」
「販促・キャンペーン」「「DM・メールマガジン・SNS」などです。
LTVについて意見交換している時に、発言している人のLTVがどんな
「意味合い・位置付け≒定義」を前提に話をしているのか確かめながら、
議論を深める必要があります。
そうすれば、LTVについての議論が空回りすることなく、お客様への活動
の進化まで行き着くことが増えます。
成果に繋げるためには、社内で掲げられたキーワードの「意味合い・位置
付け≒定義」を丁寧に明らかにしていくことは、少し遠回りに感じますが、
それが確かな歩みに繋がっていきます。
※売上をテーマに掲げている場合、売上の「意味合い・位置付け≒定義」は
何なのでしょうね。 売上は「誰に(お客様)」「何が(商品)」売れたのか、
それが積み重なったものですが、「誰に(お客様)」と「何が(商品)」のどちらが
先なのでしょうか。
そんなことを考えていく中で、その企業ならではの売上の「意味合い・位置付け≒定義」
を明らかにすることで、お客様への活動が変わると思います。