顧客戦略が進む企業は「顧客戦略のリーダーがリアルツールの一つひとつにまで目を光らせている」、たどり着けない企業は「顧客戦略のリーダーがツールを軽く考えて、現場に全面委任してしまう」
前回のVol.28では、顧客が安定的に増える「デジタルツール」について顧客戦略のリーダーが持つべき視点をお届けしました。今回は同じツールでも「リアルツール」について、リーダーが持つべき視点をお話します。「リアルツール」とは「チラシ」「DM(ニュースレター・セール)」「パンフレット」「ニュースレター」「ショップ案内」「お礼状」「イベント告知」「紹介カード」等のことです。
お客様にずっと通い続けてもらうために、顧客戦略のリーダーは、どんな視点で「リアルツール」を見つめることが大事なのでしょうか? 3つの大事な視点があります。
視点1:適切な数のリアルツールが準備されているか
リアルツールは実物があって分かりやすいので、以前を遡るとニュースレター・啓蒙冊子・連続DM/レター・FAX-DM等、一時期ブームになることがあります。ブームになるとどの企業も実施するので反響が落ちます。その結果、途中でやめてしまいます。そして、また新しいツールのブームが来るとそれに乗ってしまう。そうなると、リアルツールの全体を設計していないので、ツールの数が多すぎたり、ツールの数が少なすぎたり、そんなことがよくあります。
顧客を育成する視点からまず大事なのが、「新しいお客様を獲得するリアルツール」「中くらいのお客様を固定客(10年顧客)に育成するリアルツール」「固定客(10年顧客)に居続けてもらうリアルツール」のリストを作って、全体を把握しましょう。各ツールの役割を把握し、確かめて、適切なツール数にしていきます。
適切なツール数の見当があまりつかない場合は、同業者で最もリアルツールが充実している企業と比べて、多いのか、少ないのか、比べて、自社にとって適切な数があるのか、判断しましょう。
一つひとつのリアルツールの細かい文章、デザインは各担当に任せて良いのですが、顧客戦略のリーダーがリアルツールの全体を俯瞰して見ることは大事です。
視点2:リアルツール全体のイメージに統一感があるか
リアルツールのイメージに統一感がないと、お客様のココロの中で企業・お店のイメージが根付きづらくなります。1回の来店・購入でOKあれば、イメージをそれほど意識しなくも大丈夫です。覚えてもらう必要がないからです。
お客様にずっと通ってもらうには、記憶にずっと留めてもらう必要があります。そのためには、リアルツール全体のイメージを統一することが大事です。統一感があるとお客様も安心して読むことができます。
ぜひ、今、現場で使っているリアルツールを全部ならべてみて、統一感を確認してみてください。担当者や現場はどうしても、その時々を大事にしてしまいすぎるからです。
アイキャッチを狙って、あえて統一感を出さない方法もあるので、その場合は、イメージが少しずれていてもOKですが、一定限度で抑えましょう。
視点3:私達の想いが見える化されているか
お客様との「共感・共有」が重要というお話をVol.6でしましたが、リアルツールである「チラシ」「DM(ニュースレター・セール)」「パンフレット」「ニュースレター」「ショップ案内」「お礼状」「イベント告知」「紹介カード」等において、以前と比べて「共感・共有」のレベルが上がっているのか、確かめます。この視点を経営側が持つことで、時代を捉えたリアルツールの実践が現場で広がっていきます。
「共感・共有」レベルを上げるにあたって、着目すべきなのが「企業の想い」「商品開発者の想い」「スタッフの想い」等、想いが見えるようにすることです。想いが見えるようになっているリアルツールは、お客様の共感、共有を生み、ココロまで届きます。
逆に想いが見えないリアルツールは、もらっても読まない、読んでくれても読み飛ばれてしまうことが多くなります。想いをリアルツールに綴ることは勇気がいることなので、社員が進めるとどうしても安全パイになり、特徴がない通り一遍のツールになりがちです。自社のリアルツールが今どういう状況なのか、顧客戦略のリーダーが確かめましょう。
まとめ
今回のリアルツールは、前回のデジタルツールと同様にツールです。
ツールというと、顧客戦略のリーダーから見ると確かに小さいことかも知れません。経営戦略の立案、組織づくり、人材育成等のテーマに比べると、重要度が低いからです。
ただ、お客様から見たらいかがでしょうか?
お客様はツールを通じて企業のことを見ようとします。企業がどんな経営戦略、組織、人材育成に取り組んでいようがお客様からすると関係がありません。目の前のツールの方が大事です。
今回紹介したリアルツールの3つの視点は、お客様にずっと通ってもらうために顧客戦略のリーダーが持つ必要がある視点です。一つひとつのツールにも経営数値と同じように、目を光らせていただければと思います。