店舗の活動顧客体験

Vol.33 10年後の接客

顧客戦略が進む企業は「10年後にも求められる接客を想定して改善を続ける」、
たどり着けない企業は「場当たり的な改善を進める」

前回(Vol.32)では、「10年後の店舗」をテーマにお届けしましたが、今回は「10年後の接客」です。10年後もこんな接客スタイルは求め続けられるのではないか、そんな視点でお話します。

そもそも接客とは?

10年後、リアルな接客はいらないんじゃないか、そんな意見もあるので、「そもそも接客とは何か」から考えてみます。


「接客」とは『店舗のスタッフがお客様と言葉を交わして「“情報”の提供と交換」を行う事』と考えました(今は会計業務も接客の一部ですが今回は取り上げません。10年後この部分は、人が必要なくなる可能性が高いからです)。
ネットが登場する前は「“情報”の提供と交換」は、接客が中心でしたが、今はネット上でも情報が行き交うようになっています。

ネットかリアル(接客)か

接客における情報をもう少し詳しく見ていくと、大きく「論理的な情報」と「感情的な情報」に分けられます。
論理的な情報とは商品の機能・スペック・専門知識で、感情的な情報とは人の気持ち・感情が乗った情報と捉えてください。
さらにそれぞれ二つずつ分かれて下図の①~④のように、4つに分類できます。
それぞれ情報について、ネットかリアル(接客)のどちらが適しているか考えてみます。

10年後の接客

A論理的な情報について

A論理的な情報は、一見ネットの世界で十分な情報提供ができそうですが、あるお客様にとってどうかという「②個客の情報」の提供は、リアル(接客)の方が容易です。
お客様の状況や希望を直接聞けますし、スタッフがお話した内容について少し気になっていそうだ、ちょっと違う、迷っている…といったニュアンスを受け取りながら、断続的に届けることができるからです。
一方で「①一般の情報」は、ネット上で今後もっと広がっていくでしょう。

B感情的な情報について

「③一方通行の情報」は、ネットの口コミサイト、Amazon、食べログ、YouTubeなどから商品・サービスのレビューで感情的な情報を知ることが手軽にできます。私自身、よく参考にしています。ただ、自分がいいと思った商品の点数が悪かったり、自分の口に合わないレストランが高評価だったりするのもしばしばです。私たちは常になにかよさそうだな…と賭けて(笑)購入しているわけです。ネットを中心とした「③一方通行の情報」は感情情報として広く薄いのが特徴です。
「④双方向の情報」は、店舗スタッフが本当にうれしそうに商品・サービスをお客様にお話ししてお客様の心が動いたり、店舗スタッフとお客様が感想を言い合った際に生まれます。リアル(接客)を中心とした「④双方向の情報」は感情情報として濃いのが特徴です。
ネット上にはコスメ・美容、バイク、釣りをはじめ様々な趣味のコミュニティがあり、そこでは感情的な情報のやりとりがありますが、リアルなオフ会に参加して、親近感が増したという経験をした方も多いでしょう。

10年後リアル(接客)で求められる情報

「A論理的な情報 ②個客の情報」「B感情的な情報 ④双方向の情報」は、10年後もリアル(接客)が中心でしょう。人の好みといったあいまいな、数値化しにくい情報をネットでやり取りするのは限界があるため、②、④は、リアル(接客)の方が効率が良いからです。
10年後に向けて、リアル(接客)において強化するべき部分です。

3つの接客

そして、今よりも「A論理的な情報 ②個別の情報」「B感情的な情報 ④双方向の情報」を接客でお客様に届けるためにキーになるのが、「共振」「共感」「共有」という3つの接客です。

共振・共感・共有

「共振」の接客

まず「共振」です。今よりも「A論理的な情報 ②個客の情報」と「B感情的な情報 ④双方向の情報」を届けるにあたって、店舗スタッフが身近な専門家としてお客様からちょっとした尊敬を受けることができると、お客様に「②個客の情報」を受け取ってもらったり、「④双方向の情報」の交換がしやすくなります。
身近な専門家として尊敬を受けるためには、お客様に新しい・角度が違う価値観(考え方・捉え方)を提示して、「そういう見方があるんだ」「そうなのか~」と考えてもらう「共振の接客」が大事になります。

「共感」の接客

今よりも「A論理的な情報 ②個別の情報」を届けるためには、お客様が自分自身の事を話してくれたり、お客様が思っている事を知ることが前提になります。お客様が考えている事・求めている事に「そうなんですか」「なるほど」と深く感じ入る共感の接客で、お客様のココロのドアを徐々に開いていきましょう。「共感の接客」ができて、お客様一人ひとりの気持ちが分かれば分かるほどに、お客様に合った「A論理的な情報 ②個客情報」を届けやすくなります。

「共有」の接客

今よりも「B感情的な情報 ④双方向の情報」を届けるためには、お客様と店舗スタッフの間に深い関わりが必要になります。そのために、一人ひとりのお客様が望んでいることが実現しお客様と私達で共に喜び合う「共有の接客」を積み重ねましょう。「共有の接客」で深い関わりができれば、「B感情的な情報 ④双方向の情報」を届けやすくなるからです。
ここまで読んで、当たり前の結論と思われた方もいるでしょう。
タブレットを使った接客や来顧客データの把握等の接客のテクノロジー活用について、触れていないからです。接客のテクノロジーは、今回の結論である接客の形を前提に導入する必要があります。その観点を外して導入しても効果は得にくいでしょう。今回お届けした、「リアル(接客)」の勘所を抑えた上で、テクノロジーの活用を進めていきましょう。
それが私が考える10年後の接客です。

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