顧客戦略が増える企業は「“これからの時代の現場労働観”を軸に現場を運営している」、たどり着けない企業は「“成長時代の現場労働観” を軸に現場を運営している」
VOL.26~30までは、顧客が安定的に増える「お客様に向けた現場の活動(接客・売場等)」について、顧客戦略のリーダーが持つべき視点をお届けしました。今回は働き方改革が叫ばれる中で、「現場の労働観(=何を大事に働くかについての基本的な考え方)」についてリーダーが持つべき視点をお話します。
現場の労働観において、まず時代を超えて変わらないこととは何でしょうか。一番大事なことは何でしょうか。一定の収入・友好な人間関係、いろいろあると思いますが、もし1つだけ挙げるとしたら「達成感(=あることを成し遂げたことによって得られる満足感)」ではないでしょうか。
そんな時代を超えて大事な「達成感」をキーに、成長時代、低成長時代、これからの時代(縮小時代)に分けて、それぞれの時代に求められる現場の労働観についてお伝えします。
成長時代の現場労働観
成長時代の現場では、どのように「達成感」を得ていたのでしょうか。会社が立てた売上目標という成果に向かって、みんなで頑張って実現させることで、達成感を得ることでした。市場がドンドン拡大しているので、今と比べると、売上目標の達成も実現しやすかったのでしょう。成長時代の現場労働観の軸は「みんなで頑張ることによる成果(売上)実現からの達成感」でした。俗に言う体育会系的な価値観でした。
低成長時代の現場労働観
低成長時代に入るとみんなで頑張っても会社から与えられた売上目標に届くことが少なくなってきます。そんな厳しい時代の中で、どのように「達成感」を得ていたのでしょうか。現場のリーダー・スタッフが自らの能力を高めて成長し、成果まで行く着くことで、「達成感」を得ていくべきという世の中に移っていきました。MBAに代表される個人のスキルアップが注目されるようになったのもこの頃です。低成長時代の現場労働観の軸は「個人の成長による成果からの達成感」になっていきました。
これから時代の現場労働観
ではこれからの時代に現場で働くリーダー・スタッフはどんな形で「達成感」を感じればいいのでしょうか。低成長時代よりもさらに売上目標の実現がみんなでも、個人でも、難しい時代です。
一方で、日本の労働力が減っていく中で、数多くの会社、数多くの現場から、労働者に選ばれる必要があります。選択肢に入る必要があります。
そんなこれからの時代では、売上目標の実現で達成感を得るベースに置くのではなく、「共振・共感・共有」という新しい労働観を軸に据えます。詳しく説明すると…
現場労働観における「共振」とは、現場リーダーが会社・自分の価値観(考え方・捉え方)を提示して、「そういう考え方なんだ~」と現場で働いているスタッフに考えてもらうこと、知ってもらうことです。「共振」は会社の理念を現場レベルでも大事にしていく考え方に繋がっていきます。これからの時代に「共振」はとても大事なことで、「売上目標の実現」よりも優先することです。「共振の浸透量」が「売上」と考えます。
現場労働観における「共感」とは、現場リーダーがスタッフの意見や気持ちに「そうなんだ~」「なるほど」と深く感じ入ることです。「共感」は、若い人達をはじめ、現代で働く多くの人が求める承認欲求(=他人から認められたいとする感情)を満たすことに繋がります。
現場労働観における「共有」とは、顧客・取引先が望んでいることを、現場リーダーと働いている人みんなで協力して、実現していくことです。「共有」は自己実現を超えたコミュニティ発展の欲求を満たすことになり、高い達成感を得ることになります。
もはや現場で働くことは、社会・地域への貢献という要素も含めて考えていく時代に入っています。ある調査によると、自分の仕事が社会に役立っていると思っている人の75%が仕事にやりがいを感じていました。一方で自分の仕事が社会に役立っていないと思っている人は25%しか仕事にやりがいを感じていませんでした。
社会・地域・コミュニティ発展に貢献していくことで、達成感が積み重なり、仕事に対する安定したモチベーションに繋がり、売上目標という成果の安定実現に繋がっていきます。それは個人の成長はもちろん、現場全体の成長にも繋がります。
これからの時代の労働観は「共振・共感・共有による達成感からの成果」になっていきます。今までのように成果のためにいう労働観は現場では古めかしいものになっていくでしょう。
まとめ
「みんなで頑張ることによる成果(売上)実現からの達成感」、「個人の成長による成果からの達成感」、「共振・共感・共有による達成感からの成果」と、現場労働観の軸が変化していることを、顧客戦略のリーダーが敏感に感じ取って、現場を運営することが、これからの時代に安定的に顧客を増やしていくために大事になっています。