顧客戦略は、経営戦略のどの部分に位置づけられるのか?
「顧客戦略」はとても重要ですが、「顧客戦略=経営」「顧客戦略=企業理念」でもなければ、「顧客戦略=経営戦略」でもありません。「顧客戦略」は経営・企業理念の下位概念であり、経営戦略の中の1つとして位置づけられるものです。
そもそも店舗ビジネスの経営戦略は、どんな戦略から構成されているのでしょうか? 以下、5つの戦略を中心に展開されています。
店舗ビジネスの5つの経営戦略
1.店舗戦略 … 将来的にどんな店舗展開、店舗リニューアルをしていくのか。
2.商品・品揃え(MD)戦略 … どんな商品・サービスを品揃えるのか。
3.マーケティング戦略 … 顧客接点でどんな活動をして、お客様の数を増やして、売上を獲得していくか。
4.人事・組織戦略 … 教育体系、モチベーション施策、人材採用、組織体制をどのように構築していくか。
5.財務戦略 … 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー表を将来的にどうしていくか。
市場拡大時代に大事な「1.店舗戦略」「2.商品・品揃え戦略」
市場が拡大していく時代では、5つの経営戦略の内、「1.店舗戦略」「2.商品・品揃え戦略」が特に重要です。店舗出店のスピードが早ければ早いほどに、市場シェアを獲得することができ、商品そのものに関心が高い時代では品質の良い新商品を品揃えれば売れるからです。
これからの市場縮小時代に大事な「3.マーケティング戦略」
市場が拡大していく時代が過ぎ去って、これから市場縮小時代が見えてきた今、同じお客様にずっと通い続けてもらうことが大事な時代を前提に、「1.店舗戦略」「2.商品・品揃え戦略」「4.人事・組織戦略」を見てみると…
・ 「1.店舗戦略」を進めて、新店オープン、店舗リニューアルをしていくと、新しいお客様は増えますが、同じお客様がずっと通い続けてくれる土台が甘けれ ば、数回来てくれるだけで終わってしまう。各社が店舗戦略を進めて店舗が飽和状態なので(ネットショップも拡大)、近くに同業店があることが多いので、浮 気される可能性が高まっている。
・「2.商品・品揃え戦略」を進めて、新商品・新カテゴリ?商品を導入してお客様を獲得できても、競合他店でも同等の商品をすぐに取り扱う可能性もあり(商品開発のスピードアップ)、商品・品揃えを同じお客様にずっと通い続けてもらう中心戦略に添えることは荷が重い。
・「4.人事・組織戦略」は、クレームが出ない基本的な教育、顧客接点での活用が難しい知識習得メインの教育、売上に対するインセンティブ等の一過性のモチベーションアップ策が中心になっていることが多く、同じお客様にずっと続けてもらうこととは少し距離がある。
同じお客様にずっと通い続けてもらうことが大事な市場縮小時代では「3.マーケティング戦略」を経営戦略の中心に添えて、ビジネスを進めていくことが大事になっています。5つの戦略の中でその重要性が高まっています。
「3.マーケティング戦略」に対する、経営層の認識違い
「3.マーケティング戦略」は、「マスマーケティング、データベースマーティング、ダイレクトレスポンスマーケティング、CRM、顧客戦略等」がその本質で、その戦略を進めるために「販促プロモーション、販促DM、販促ツール等の戦術」があるのですが、経営層の皆さんの中には、「3. マーケティング戦略」を「販促プロモーション、販促DM、ポイントカード、販促ツール等の戦術」とイコールで考えていることがあります。
そうなると「3.マーケティング戦略」戦略が存在しない状況に陥ります。さらに「戦術」なので経営者である自分の仕事ではないと考えます。確かに「販促プロモーション、販促DM、販促ツール等の戦術」は、部下に任せてもいい部分です。
ただ「3.マーケティング戦略」は、経営層の皆さんが自ら考えるべきテーマです。
「3.顧客・販売戦略」が大事だと分かっていても熱心にやらない経営層も…。
実は、経営者の中には「3.マーケティング戦略」が大事だと分かっていても他の戦略と比べて、あまり熱心にやりたがらない経営層もいます。
なぜなのか?その理由を考えて見ると、1つの理由が浮かんできます。
他の戦略と比べて、経営者の思い通りにならないからです。
例えば「1.店舗戦略」「2.商品・品揃え戦略」「4.人事・組織戦略」は、経営者の思い通りになる社内(&外部の協力会社)で取り組みをはじめることができ、進めることができます。
一方、「3.マーケティング戦略」は、「社内にいない、一つも命令できない外部者である顧客」が相手なので思い通りにならないことが多いのです。
「3. マーケティング戦略」を熱心にやらない経営層の元では、「3.マーケティング戦略」は、社内でいつのまにか「販促プロモーション、販促DM、ポイントカード、販促 ツール等の戦術」にすり替わります。戦略が存在しない状況に陥ります。大手企業でさえも、この状況になっている企業は実に多いです。
市場縮小時代では「3.マーケティング戦略」が最重要課題です。より意識する必要があります。
「3.マーケティング戦略」の王道は?
そんな市場縮小時代の「3.マーケティング戦略」の王道になるのが、「顧客戦略」です。なぜそう考えているのかとあらためて、お話します。
「3.マーケティング戦略」の一番の理想的な姿はどんな姿なのでしょうか?
それは「継続的な顧客数アップと売上・利益のアップ」でしょう。
そのためには「はじめてのお客様が半年・1年・3年・5年・10年にわたってお客様にずっと通い続けてもらい、お客様の数を安定的に増やす仕組み・基盤=顧客戦略」が不可欠だからです。
これからの日本市場は、どんな時代になろうと、お客様にずっと通い続けてもらうことが大事なことは変わらない事実ですし、新しいマーケティング・ツール・手 法が開発されようと、はじめてのお客様が半年・1年・3年・5年・10年にわたってお客様にずっと通い続けてもらう道具であることに変わりはないでしょ う。結局は「顧客戦略」の傘の中に入るでしょう。
時代を超えて動かない価値、それは王道でしょう。
これからの店舗ビジネスの最重要戦略である「マーケティング戦略」における王道、それが「顧客戦略」です。「企業を新しい成長に連れていく経営層」と、「顧客戦略」は切っても切れない関係です。